東日本大震災対策組織図と2013年までの政局の予想

東日本大震災という状況は、未だ継続中。
そして、「震災という日常」に馴染みつつある。
そんなことを言っていられるのは、インフラや個人の居住地、家財に影響を受けていないからであるのは重々承知しているのだが、出版業界にも様々な影響が波及しつつある。
東北の被災で製紙工場とインク工場がダメージを受け、出版業界は今、未曾有の「用紙不足」「インク不足」となっている。
まさかと思うかもしれないけど、「漫画はベタをなるべく使わない方向で」とか、そういうお達しがまことしやかに囁かれているのは、同人業界だけではない。同人業界も大変だろなと思うけど、発行規模が桁違いな商業出版界の被るダメージはこれまた桁が違ってきているらしい。
今の所、予定された刊行スケジュールは予定通りに進められているけど、この先どうなるか。
いっそ、これを機に電子書籍への道が加速されるのか。
憶測・観測はいろいろあるし、幾つか「動き」もあるようだけれども、何がスタンダードになっていくのかは、まだまだわからない。
それぞれの持ち場で、それぞれがやれることをやるしかないってことですな。


その復興の司令塔になるのが政府の震災対策組織群であるのだが、なんかいろいろ対策本部が乱立している。
元々民主党は野党時代から何かと言えばPT(プロジェクト・チーム)を立ち上げる党だった。そういえば「熊対策PT」ってのもあったなあ。アレどうなったんだろう。
で、与党となって実際に事に当たらなければならない現在、さぞや能動的に実行権限を伴うチームを発足させているのだろう、また、自民党に対して批判してきた「無駄」を作らないよう、機能的に重複するようなチームを乱立させるようなことは、さすがにしていないだろう――。


と、誰もが有事の正気、火事場の馬鹿力の発揮という一縷の希望を抱いているのではないだろか。


ヒゲの隊長こと佐藤正久議員*1のとこで、政府の震災対策組織が今どうなってるのかについて調べたらしい。


http://east.tegelog.jp/?blogid=24?catid=164&itemid=9040

大きな画像は上記リンク先の佐藤隊長のブログをご覧戴くとして。
これは4/12の参院外交防衛委員会での質疑用に配られたもので、佐藤隊長の事務所で作成した図らしい。というか、全貌を把握している人間が、政府・各省庁のいずれにもいなかったらしく、○○○会議、○○○チームとして設置されているものひとつひとつについて、訊ねて回って作成された労作なのだそうな。

上は、佐藤事務所で作成し、本日の委員会で配布資料とした、今回の組織図だが、○○対策本部、○○対応本郡という組織が、乱立しており、どこのセクションが何をやっているのか、その○○本部の間の調整を誰が担っているのか、よくわからない。

昨日、この組織図を作成するために、関係省庁にも聞いたが、各省庁の官僚もあまり理解をしていない様子。結局、指揮系統が不明確であり、責任の所在もわからない。

原発災害に伴う風評被害はどこが所掌なのか、原子力経済被害対応本部と原子力被災者生活支援チームの違いは、原子力損害賠償紛争審査会は誰の指揮下なのか、委員会質疑で、これらの点を質したが、明確な答弁もない。

途中で、質問をするのをやめようかと思ったぐらい、政府に全く責任感が感じられない。


(――ここまで佐藤議員ブログからの引用)

これは、ねえ。
こういう事態なので、政府も頑張ってるんだからと手控えたいところではあるけど、「誰が何の権限を持っている」「○○○を進めるのに、誰と連携する必要がある」「判断に相違がある場合の優先順は○○○にある」などについて、設置した政府与党側も把握していないというのは、非常に不味くないか。
もちろん、事態が事態故に泥縄式に次々に追加されていったんだろうことは否めない。有事の際の混乱はある程度仕方ない部分はあろう。
が、これでは復興を進めようにも救済や補償を進めようにも、相当手間取りそう。
そう、自民党時代の不手際の象徴として言われた【エンドレスたらい回し】が簡単に起こりそう。
例えば被災地から陳情する、何らかの許諾を得るのに誰に話を持って行けばいいのかわからない、という感じ。




解散総選挙がなければあと2年間、あって、仮に民主が下野しても、参院選があるのは2年後で、それまでは次の政権も安定運営は決して容易くはない。
例えば年内に総選挙があり、自民が政権に就いたとする。
民主を含むそれ以外の党との連立はなくはないが、どの党も参院で安定多数を持ってはいないので、何らかの連立与党にはなる。
その連立与党が携わる目前の政治課題は復興なのだが(もちろん、それ以外の全ての政策も止めておいていいわけではない)、これは多方面から不満の出まくる難事業になるので、2年も続けた頃にはその時点での与党に対する批判・不満が溜まりまくっていることは予想だに難くない。
つまり、今自民ないしその他の党が政権をとっても、2年後の参院選には恐らく勝てない。ので、そこでまた衆参ねじれが起き、参院安定多数を持たない与党は下野する。
その時点で再び民主が政権に復帰する。
「今の体たらくを見て、それでまだ民主に入れる奴なんかいるわけないだろ!」
と、2011年春の今なら皆そう思うだろう。
でも人は、喉元を過ぎると熱さも苦さも忘れる。
「自民に戻してやったのに、自民でもダメだった。今なら民主も頭を冷やしているだろう。一度は政権与党を経験したのだから、心も入れ替えているに違いない」
そんな夢を見た人が、また2013年参院選で民主に入れてしまい、再び空転して何も決まらない国会が始まる。




最悪のシナリオとしては、恐らくこれから10〜20年オーダーでこの手の「政治的思考停止」が続くということかもしれない。
不満に次ぐ不満、責任転嫁に次ぐ責任転嫁。
俺は悪くないんだ、あいつが悪いんだの繰り返しで、何もかも決まらないまま足踏みを続ける――。


怪談屋、加えて安全保障趣味者ですので、「考えうる限りの最悪」を想定するのは習性のようなものなのだけど、これが頁を閉じたらなかったことになる話ではない、というところが現実の怖いところ。