観劇くりびつてんぎょうと、遺託出ました

ハイトニっこ仲間だった千晴ちゃんがまた舞台に上がるというので、劇団くりびつてんぎょうの芝居を見に行った。
場所は、うちからバスで一本wの、目白アイビックという住宅街の中にぽつねんとある劇場なのだが、
「本日はお足元の悪い中……」
という挨拶がこれほどハマるシチュエーション&場所もあったもんじゃないなあというか。
表通りからの路地が大雨でできたでかい水たまりで水没していて、踵の高い靴とか小綺麗なカッコした人達が大変なことになってたw


芝居のほうは、くりびつの芝居はとにかく出演者の人数が多く、20人以上が様々な役柄で登場するのだが、千晴ちゃん以外にもいる僕のお気に入りの役者さんが今回も出演していて、それはそれで堪能してきた。


千秋楽ということで客席は満席だったが、全体に客の入りは激減しているのだそうで、「被災地支援の前に私を支援してって感じですよ」と。
震災以降、小さな劇団やライブなどの客足が縮小傾向にあるようで、どこも苦しいまたは「これを機に……」と畳んでしまうところもある様子。


電力を使うから節減、優先して必要なものじゃないものは節約、という方向に針が振れると、最初に削られるのは娯楽・付加価値産業、食費なのだそう。
「なくても困らない」
「質を落としても我慢ができる」
の筆頭がそこらへんなので、芝居やライブがダメージを受けるのは必然といえば必然。
音楽はストリートに場を移したり、或いはネット上に舞台を移したりといった変化は起きていると思う。
芝居も或いはそういう変化が起きているのかもしれないけど、できることなら音楽と芝居は生でもみたい。芝居は特に生で見たい。聞きたい。


小さい部数の本と小劇場ってのはちょっと似ていて、熱狂的な支持者、或いは古参の読者による熱狂的ではないけど息の長い支持というものに支えていただいている部分がかなり大きい。
「台風で、しかも水たまりで水没しちゃうような路地のある劇場の先であっても、節電/節約の時節柄であっても、足を運んでくれる観客」
と、
「毎月のお小遣いを圧縮しているであろうにも関わらず、好きな作家の本だから、と快く財布を開いてくれ、台風の最中に本屋やコンビニを覗き回ってくれる読者」
という。
作家、作演出者には、ついつい「俺の歩いた後に道が出来、読者観客は俺が作った道を付いてくる。客は俺の導きに縋ってくる」などと気が大きくなってしまう向きもある。
まあ、小心者が勢いで思い上がらないと書けない/できない商売でもあるので、それは致し方ないところなのだろうけれども、困窮してる時代にも見放さずに支えてくれる人達こそ、大切にしないといけないのかも、と思う。






そんなわけで、これからまだまだ続くこんな大変な時期に、新刊が出ました。
先週末くらいから都内の書店にも入り始めていますが、週が明け台風も去り、ぼちぼち地方書店の店頭にも並ぶ頃です。
今回は、事故と無念と杞憂に纏わる「遺託された話」*1が中心です。
お手に取ってご一読いただければ幸いです。



「極」怖い話 遺託
加藤一 著
竹書房文庫(税込660円)


そういえば、こんな評を頂戴しました。
「先頭バッターがバースみたいな本」
言い得て妙。

*1:遺託されたシモ怪談も少し