節電考

節電については色々考えないではないのだけど、結局のところ「気合い」や「我慢」で解決できることには限りがある。
僕は8月生まれだし、実家にいた頃の勉強部屋は夏の室温が40度以上、エアコンはなく、南にある海からの風(潮風なので髪の毛がベタベタになる)は、勉強部屋の窓を開けても入ってこない。窓は東西にあり、南北に吹く風は入らないのだった。
そんな条件下が「日常」だったので、人間としては暑いのには比較的強い。
強いのだが、人間は良くても「機械」はそんなに頑丈じゃない。


昔に比べればだいぶよくなったのだろうが、一昔前(といってもほんの5年や10年前)のパソコンは、しばしば「熱暴走」を起こした。
熱だれというか、パソコン自体が出す熱がパソコン内に籠もってしまう。CPUは動作中、ずっと大熱を出しているので、これを冷やすためにヒートシンクという熱を汲み出す部品と、そのヒートシンクを冷やすファン(一般的には空冷。度胸と技術と好奇心の強い人は水冷w)が全力で冷ましている。
要するに、熱い空気はパソコンの外にどんどん排熱されるわけで……要するにパソコンの裏側からは夏冬問わず温風・熱風が吹き出し続けている。
さらに、モニターも熱い。CRTモニターも熱かったが、液晶モニターになっても熱い。熱い証拠に冬場になると猫が暖を取りに来るくらいには熱い。
スタンバイ状態にあるプリンターだって熱い。いや、熱くちゃいけないのでファンが回ります。
そしてこれも、対応策は「冷やすこと」しかない。


家庭では(そして事務所などでも)取れる対策は「エアコンで室温を下げる」が関の山。
もちろん節電対策で設定温度を1度、3度上げましょうという節電対策案は出ているだろう。人間はそれに耐えられるだろうけど、機械はどうかなー、と。


過去に僕が体験した熱暴走では、暴走の挙げ句にHDDが暴走機関車のような音を立て始めて死にました。校了直前にな!(´;ω;`)
暴走しない、壊れない場合でも影響は出る。
あまりにも高熱になると、プラッタ*1が熱で僅かに伸びてしまう*2らしい。
例えて言うと、夏の暑い日にグラウンドのトラックが熱で伸びてしまうようなもの。一周400mのトラックが、高熱で420mになってしまう。
HDDの回転数(この場合、ランナーの走る速さ)は変わらないから、ランナーは400m分走るが、トラックがのびてるから、20m分だけ一周に足りない。
その状態で、20m分だけずれてデータが書き込まれる。
そして熱暴走が沈静化した後、つまり冷えてトラックが400mに戻ったときに、熱いときに400mのつもりで書き込んだデータを読み出そうとすると、今度は400ではなく380mくらいとかで書き込まれているので、情報が正しく取り出せない。
その結果、プラッタ上のデータは「間違って書き込まれている」として処理されてしまうので、読み出せなくなる(゚д゚lll)


これがHDDの熱暴走の怖いとこで、人間が耐えられても機械が耐えられない、ってのはそういうとこ。
最近では、回転しないSSDの動作保証温度は100度くらいでも大丈夫らしいが、HDDはやはり50度前後が正常動作であてにできる上限じゃないかしらん。
室温が40度くらいになってるとき、密閉されたパソコンの内部の温度は+10度以上はあると思ったほうがいい。
そしてHDDの正常動作時の温度は、32〜38度程度。50度は絶対に高すぎ。
そうなったら室温下げるためにエアコン回すか、そうでなければ……


「仕事も勉強も放りだして家を飛び出せ!」


ということになるのだが、それはたぶん一夏で1回くらいしか使えない手段だと思われる。
家庭・職場などでできる節電には限界がある。
節電を頑張っても、大して大きな効果は得られない。
節電と引き替えに別の対価を支払う必要からも逃れられない。




今年の夏は、電渇恐慌と向き合う夏になりそう。

*1:HDD内の金属円盤。ここにデータを書き込む

*2:熱膨張