裏や(池袋)

先だって夜の池袋を彷徨った。
新宿だと「バール生田」、東長崎だと「とりんと」か最近だと「ふーちーくーちー」。
池袋は最近だと「磯丸水産」か「魚がし日本一」といったところで、世界に冠たる繁華街を持つ街(東長崎を除く)に電車一本で行ける割に、電車一本、5分とか15分とかで地元に帰ってこられるせいか、あんまりそのへんで喫食しないというか、新規店開拓をあんまりしてない。
とはいえ、もう天狗とか和民とか飲み放題とかで元を取れる気が全然しないので――となると、俄然選択肢が狭まるお年頃……orz


家人が「バスで通りかかる道沿いに、凄く気になる店がある」と言って、その朧気な記憶を頼りに池袋南口を小一時間ほど彷徨った。
「ここか?」
「違う気がする」
「ここは魚が良さそうだが」
「酒がダメな感じ」
「ここは……おお、店がなくなってる!」
というような感じで歩き回り、ぼちぼちどこでもいいから落ち着こうかという話になった辺りで、
「じゃあ、ダメモトでもう一通りだけ見よう」
ということで通った明治通り沿いに、その店はあった。



店の名前は「裏や」。
日本酒、地酒百何十種類ほどご用意してます系のお店。
入り口はビルの一階にちょこんと出ているだけで、店は階段を下りた地下にあった。
テーブル席とカウンターがあり、金曜の夜8時過ぎ、一巡目が終わった辺りであろうのに、空席がほとんどない。カウンターに通されて、それで満席になった。その状態がほとんど閉店近くまで続いてたような。
酒の種類が尋常じゃない店というのは、正直言うと「探すと割とある」。
店主が凄く拘ってる、という店も最近は「結構ある」。
んだけど、ホールスタッフが異常に詳しい店ってのは、あるようでいてない。三〜四人ほどいたホールスタッフのほとんどが、酒の説明、味の説明、飲み方の説明ができる、ってのは結構凄い。そして、客の好みから「お奨め」を探せるというのは案外できそうでいてできない。
ワインの場合はそれに類するソムリエという職種が成立してるけど、日本酒のソムリエってのはいそうでいない。よしんば、店主がそのくらい熱意を持っていて詳しくても、そういう店主はだいたいオーナーシェフというか厨房を兼ねているので、ホールの接客にまで手が回らず、ホールが店主にいちいち確認、というパターンが多い。
家人がお奨めから一本頼むと、たまたまそれが品切れだった。
「近いので他に何かありますか?」
とたずねると、
「この辺りが近いと思います」
と、三本持ってきて、それぞれ利かせてくれた。うち一本は封切り!
お奨めを口頭で教えてくれる店はあるし、メニューに書いてる店もある。
でも、利かせてくれる店ってあんまりないんちゃう?

お通しは二種。ひじきと、もうひとつは何かの南蛮漬けみたいなもの。どちらもうまかった。
魚はちょいと値が張るが、盛り合わせをお好みで選ぶ&お任せがあって、お任せのほうがちょい安め。でもモノは確かだった。ほうぼうとイサキうまかった。
肉モノもハズレなし。
何この店。なんで今まで気付かなかったorz


そして、ここには熟成酒、貴醸酒、全麹酒が置かれていた。
試してみたいと思っていたけど、飲んだことなかった!
それも、片手両手で足りないくらいある(゚д゚lll)
この日は、〆に飲み慣れた開運(静岡)の十年熟成酒を頼んでみた。
つまみには甘いものが良さそうな気がしたので、日本酒ではあまり合わせない胡桃のキャラメリゼを合わせてみると、これがまた何これっていうかこれ本当に日本酒ですかまじですかヤバイマジヤバイ。
バーボンみたいな芳香があって、甘みの他に幽かな苦みと香ばしさがある。とろっとして長く寝かせたウィスキーみたいになってる。ナニコレ凄い。っていうか、まだまだほんの片鱗とかどういうことですかー!



……決して安い店ではなかったんだけど、間違いがひとつもない店だった。
頻繁には行けないけど、これはできる限り行かねばと思った。
良い店を発掘できました。