脳煮え

PCのアレやコレの問題はかなり落ち着いてきたが、未だにiPodの整理&以降が終わらないでいる。
特にプレイリスト。曲データそのものは一通りあるのだが、エクスポートしときゃよかったなあ、と今更ながら後悔。
で、なんとなく今更ながらVIPSTAR関連の曲などを流して脳煮えを楽しみつつ原稿を書く。


結局VIPSTAR関連はおきまりのJASRAC冷や水で解散となった。そういや、NOVAうさぎリミックスなんかもそうだった。
もっともこうした替え歌、インスパイヤものというのは、原曲者の「黙認」の元で許される性格のもので、騒ぎが大きくなりすぎたらピシャリとやられるのは致し方ないのかもしれない。それでも、NOVAうさぎリミックスを経験した後に、もう一回やってしまうところ(主メンバーは違うのだろうけど)が懲りないなあと思う反面、いつもいつも強かだなあ、と思ったりもするところ。
VIPSTAR関連では、何人か固定のシンガーはいたようだ。
有名どころはLivedoorの忘年会にも呼ばれた(笑)という「KOBARYU」。平井堅激似の声色、歌唱力も確かだ。KOBARYU以外では「祭りだっ!」も割と好みの声というか、うまいシンガーだった。「鼻声」、「犬」など女性シンガーもいた。原典が女性の曲だったりした場合、やはり女性シンガーでないとなあ、っていうかVIPPER的はしたない歌詞を女性が歌うというところに価値が(笑)
もちろん、固定のシンガーだけど歌唱力に難ありというか、「なんじゃこりゃあ!」というほど音痴なシンガーもいたりはした(^^;) 聞いてるだけで脳が煮えてくるというかなんというか。
それでも、最初のうちは些細なところが気になって、それによって「プロのシンガーってうまいんだなあ」という逆リスペクト感情が生まれ、思わず原曲を買いに走ったりしてしまう。これはこれでインスパイヤものが原典への購買欲を刺激してる気がする(笑)
そして、さらに量を聞いていくとそういう「些細な」ところはだんだん気にならなくなってくる。その上で、素人ながらもなかなかなシンガーを見つけられるようになっていくところがおもしろい。例の「物欲最大状態で調べ物をしているとき」にも似ている。


VIPSTAR関連は、それが「おもしろいな」と感じるようになったところで祭りが終わってしまった。JASRACの主張は彼らの論理に照らし合わせれば正論だろうと思う。が、インスパイヤ、フェイク、コピー、クローン、そういうものによってオリジナルが際だつということは起こりうるし、また、「真似」から新たなクリエイターが育つということもある。そうした市場ができることもある。*1
その意味で、「新しい何か」が出てくる土壌、または最初の第一歩として、さらにはオリジナルを見直すための機会としても、【パロディ】というのは認めていいというか、認めるべきなんじゃないかなと思ったりする。その原典が存在することがきちんと明示されていれば、アリじゃないかなあ。原典を知らしめるための広告効果として。



出版(コミック)の世界ではこうしたパロディ、インスパイヤとされるものには「同人誌」がある。
これらの同人誌はどういった扱いになっているのかと言えば、多くの編集部的には「黙認」の形になっているのがほとんどではないだろうか。
理由として考えられるのは、それらが「人気のバロメーター」になっていること。逆に権利保護のための殱滅を行うと、「狭量」とされてしまいかねない*2。子供向けのキャラをボーイズラブや男性向けに使われてしまうのはたまらんのだろうけれども(^^;)
でも、そうしたネタだけで特定ジャンルイベントが開けてしまうくらいの大量のインスパイヤ同人誌が存在している。ゲーム同人の場合、メーカー主催即売会なんてのもあるくらいだ。

出版の世界というのはよほど版を重ねない限り*3は小商いである。結果的に同人誌の認知でバリューが上がったほうが、メーカー/版元的にも利益が大きいということかもしれない。

また、ここ20年ほどの間では、そうした同人誌・パロディの世界から新人がデビューするという傾向が強い。同人誌出身の作家というとどうもオタ臭いイメージが強いかもしれない。もちろんそういう作家もいるだろうが、例えば名探偵コナン青山剛昌氏は元々コミックマーケットでぶいぶい言わせていた同人作家であり学漫出身である。同氏がデビューした頃、小学館は早くも同人誌即売会での青田刈りを始めていた。漫画家の元に入門してくる初心者を育てるよりも、それなりの即戦力、または即戦力直前の素材が揃っている同人誌即売会を歩いた方が人材確保は確実だ、という判断もあっただろう。

その後、同人誌市場がそれなりに大きな安定市場に育ってしまったため、「商業デビューしなくても同人誌で食べていける」となり、却って「商業デビュー」は目標のひとつであっても永続させる就職先ではなくなってきているようだ。


ともあれ、出版の世界から見ると本来なら利益を横取りしているはずの同人誌界を、商業出版に対するマイナーリーグという見方をして認知(黙認)してしまい、そこからメジャーリーグのための人材を引っ張るという活用方法で共生できている。

音楽業界もそういうスタイルをとってもいいんじゃないかと思うのだが、JASRACがある限りそれはできないだろう。

*1:以前あった翻訳ロック「王様」とそれに連なるブームもそうだったと思う。

*2:著者の権利を厳密に保護しようと考えるなら、それもまた正しい対応なのである。が、その正論を押し通すことで、今度はネガティブなリスクも負うことになる。編集部が「著作権侵害の排除殱滅」と「著者・著作・商品イメージの維持」と、どちらにメリットを見いだすかで、対応は変わると思う。

*3:出版が大商いになるのは、最低でも10万部を超えてからの話。それでも、関わる人数が少ないから大商いになるのであって、関わる人数が多く単価が高いCD/DVDなどに比べると商いの規模は小さいと思う。