骨伝導補聴器
実家の老父がだいぶ耳が遠くなってきたらしい。
という話を弟と老母から相次いで相談されたので聞いてみると、補聴器とか使ってないという。
老父は引退前はずっと魚河岸勤めで、回転ノコギリで冷凍鮪を裁断する仕事をやってたのだが、その破砕音なんかでもともと難聴気味なのだという。
踏切のカンカンいう音が聞こえなくなってきたとか、後ろから来る車の音が聞こえないとか、そろそろ臨界点に来てるということで、補聴器を奨めることにした。
イヤホンを耳に入れる習慣がない人にとって普通の補聴器は結構煩わしく、また夏場なんか汗をかく季節に長時間耳栓してる状態なのは、そうとう不快感があるものらしい。
そんじゃーということで、ちょっと値は張るけど、骨伝導式の補聴器を探してみた。
そもそも音を聞くというのは、内耳の中の鼓膜が振動することによって可能になるのだが、事故で鼓膜を失ったり加齢で鼓膜が弱ったりすると、音が聞き取りにくくなる。
骨伝導というのは鼓膜を振動させるのではなく、頭蓋骨(頬骨、顎骨)などを直接振動させる骨振動によって鼓膜を介さずに内耳に音を伝えるという技術。
すでにオーディオヘッドホンや、レスキュー隊員など耳をふさげない環境で仕事をする人のためのインカム、バイク用ヘルメットに仕込むイヤホンなどなどの形で出回り始めている技術なのだが、補聴器にも応用されているらしい。
今、骨伝導補聴器で検索すると、だいたいトップにくるのが「きくちゃん」という補聴器。1セットで、45000〜70000円くらいと、相当値が張る。介護用品ということで非課税なのだが、それでもこの値段なのは、やはりまだまだ需要が多いものではないからなのだろうか。
もっと安いのねえかー、と検索していくと、「きき耳くん」というものを見つけた。きくちゃんと同じく集音した音を骨伝導ヘッドホンで伝えるもの。集音部分はきくちゃんより小さく、またバッテリーは通常の単四電池を使えるようで、エネループなどの充電池も使えるし、出先での電池切れにも困らない。携帯用というか、外出に向いている。技術的には同じことをやってるわけなのだが、この「きき耳くん」というのは厳密には補聴器ではないらしい。
なんで?
と思ったら、「補聴器」という言葉を使えるのは、医療用具の認定を受けたものに限られるのだそうで、きくちゃんは医療用具の認定を受けているから補聴器。きき耳くんは医療用具の認定を受けていないので補聴器という言葉を使えず、「骨伝導聴音補助器」という呼称になるらしい。
認定を受けていないから安いのかどうかはわからないけど、「きき耳くん」だと「きくちゃん」とほぼ同じことができて、値段は30000円以下とのこと。
調べていくと、「きくちゃん」「きき耳くん」の双方を1週間5000円でレンタルするという試みをしている会社があった。両方試してみて、気に入った方または両方をお買い上げください、というものらしい。確かにこうした機器は扱っている店が多くない上に、実際に使い心地を試してみないと買っていいかどうか戸惑う。値段も決して安くはない。一週間5000円のレンタル料が高いのか安いのかも迷うところだけど、とりあえず試して貰うことにして、レンタルを申し込んでみたのが一昨日の話。昨日発送されて、今日の午前中には到着したらしい。
と、ここまで書いているところで実家からSkypeコール。
とりあえずきき耳くんを試しているとのことで、かなり音が大きく(鮮明に)聞こえるようになった、という報告だった。
僕の記憶にある老父は普段はどちらかというとあんまりしゃべらずにニコニコしてるだけの人なのだが、今日はずいぶんとテンション高い。やはりいろいろ聞こえるのは楽しいらしい。
インナーイヤホン型はやはり煩わしいのだそうで、耳掛け式ヘッドホンタイプが使い勝手がいいようだ。
「手で押さえるともっとはっきり聞こえる」*1
「明日はきくちゃんを試してみる」
とのことだったが、おそらくどっちか*2を常用していくことになるだろう。
親電脳化計画がまた一歩(笑)