トークの壁

歌うソフトと喋るソフトというのは、技術的には近いんだろなと思う。単純に言えばどちらも合成音声(またはサンプリングした音声)に発声させているし。人間の会話音声というのも、歌と同じく声帯を使って音を出しているわけだから、原理的には歌うソフトで喋ることもできるはず。


というより、喋らせるより歌わせるほうがずっと難しいんじゃないかと思ってた*1んだけど、喋らせるほうがずっと難しいらしい。
会話音声の全てをドレミの音階に置き換えることは可能だろうけど、人間は常に一定の音階で音を出しているわけではなく、擦過音、半端なレガートの組み合わせで声、感情を表している。通常の会話でのそうした音声を全て「音楽」として聞き取るためにはモーツァルトばりの絶対音感がないと厳しそうなうえに、できあがったものはAメロもBメロもない、不定進行のものになってしまうんじゃないかとかなんとか……。


歌わせる場合、ある程度楽曲にもよるんだろうけど、発声のリズムが一定しているし、短くて1分半、長くても5分程度の曲なので、一音一音全てのADSRをチェックするのは可能なのかもしれない。
しかし喋らせるとなると……。


歌の中のMCやお囃子、合いの手的に初音ミクに喋らせている例は実際にあって、ほんの一声「えっ?」「やだっ!」だと実に自然だったりする。

初音ミクイメージソング 〜 ちょっとおちゃめなVOC@LOID【2番追加】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1156688

これは初回発表が9月でかなり早い時期(初音ミクジナルの世界では9月発表はすでに古典w)の曲なのだが、合いの手的に喋らせていて、それが案外自然に聞こえる。

初音ミク】恋スルVOC@LOID
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1050729

初音ミクの中ではメジャーヒットタイトルになるこの曲の冒頭、歌に入る直前に「わん、つー、すりー、ふぉうっ!」とリズムを取る歌じゃない発声が入る。この作者は「発声」についていろいろ挑戦していて、同じ「恋スルVOC@LOID」のテイクゼロ(一番最初の練習風景)を作っている。

初音ミク】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【おまけ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1346602

基本は歌なんだけど、初めて歌っているのでいろいろ失敗している、噛んでいる、音をハズしている、歌ではないボヤキや文句が入っている、やっつけで歌っているなどなどの小芝居をいろいろさせている。
この作者はさらに頑張って、「初音ミクがラジオ番組のDJをやったら?」というシチュエーションで、喋らせている。

初音ミク】恋スルラジオ【おまけ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1382875
初音ミク】恋スルラジオ 第二回【おまけ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1425827

やっぱりカタコトなのだが、声の抑揚とか考えている様子。
基本はロボ声から脱却できていないのだが、場所によっては妙にナチュラルに聞こえるところもある。音階だけでなく、単語によって長さも変えるとリアルになるんだなあ、とか、いろいろ課題として考えさせられるところも。試みとしては大変貴重。
ナチュラルに喋れというとどうしてもロボっぽくなってしまうのに、歌の中に仕込まれた合いの手・お囃子的な曲は、あんがいナチュラルに喋ってるように聞こえてしまう、という実例が「初音ミクの暴走」。

初音ミクにオリ曲を喋ってもらった  「初音ミクの暴走」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1342044

大部分は歌だし、ラップとも言っていいのかどうか悩ましいのだが、曲が流れていれば結構しゃべりに聞こえないこともない。

初音ミクの暴走にチャレンジしてみた(青もふ)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1379607
風邪引きが「初音ミクの暴走」を歌ってみた
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1423226

この「初音ミクの暴走」を人間が歌ったのがこの人間の逆襲シリーズ。
歌い手の青もふ氏などがかなりがんばって初音ミクっぽい歌唱を実現しているw
って、それは本末転倒ちゃうのと思われるかもしれないのだが、初音ミクボーカロイドは「人間には絶対に歌えない(超難度の)曲」というのもいくつかやっていて、音域が異常に広い(高い)、スーパー早口などなど。「初音ミクの暴走」は早口系なのだが、青もふ氏などに人間の底力を見たというか……(^^;)
これを聞いた後に改めてオリジナル版の初音ミクの暴走を聞くと、「案外ナチュラルに喋ってんじゃん?」と思えてくるから不思議。
このへんの「人間の逆襲」は非常に興味深いので、またいずれ。


というわけで、喋らせるのはまだまだ初音ミクでも難しいらしい、というのが本日のエントリーのテーマ。
エンディングはw、厳密には喋ってないんだけど歌うように喋るとナチュラルに聞こえてしまう好例で、やはり今のところは「歌ってこその初音ミクMEIKO」ということで。

MEIKO+初音ミク オリジナル「3秒ルール
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1395817

*1:喋るソフトのほうが先に出てきたから