支那砲、米国によって実現す

ミリヲタ的な覚え書き。

米海軍研究所、10メガジュールの本格的レールガン発射実験に成功 - Technobahn
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200802012310&photo=zoom

レールガンというのは、リニアモーターカーなんかと同じ原理で、電磁石によって貨物・弾体・荷台などを移動・射出する技術。
レールの上に車両を乗せればリニアモーターカー*1
そのレールを途中でぶっちぎって、直線のレール上に戦闘機を乗せれば、空母艦載機発射用カタパルト*2
そのレールで弾頭を打ち出せば、「電荷をかければかけただけ、高速かつ遠方に弾頭を打ち込むことができる電磁砲」になる。レールガンの名前の由来はこのへんか。


で、僕はこのレールガンという言葉がまだあまり今ほど一般的ではなかった時代、今から21年くらい前に、戦前の日本の軍事・科学技術関係の文献を漁っていて、それに該当する記事を読んだことがある。
その文献は戦前(1920〜30年頃と思われる)に刊行された古書(レプリカではない当時の本)で、少年或いは一般に向けて科学技術や当時の軍事について啓蒙する目的で書かれていたものらしい。
その中に、「支那砲」という記述があった。
支那砲は、「電磁石に電気を流すことで物を高速移動させる技術を応用した超長距離砲」と説明されていた。要するに、レールガンである。
「長崎に据え付けることで、支那を直接砲撃できる」とも書いてあった。だから支那砲。絵図などはなかったが、当時は有名な超長距離砲としてナチスドイツの列車砲などが知られており、「超長距離砲撃」の概念はすでにあったようだ。
実際に支那砲が作られたという話は聞いていないので、おそらく先端技術を紹介しつつ少年に科学への興味を持たせよう、という意図の……まあ、SF本というかそういう類の本だったのではないか、と今は思っているけど。
でも、かつてそうやって「支那砲!」「都市一つ分を賄う発電所ひとつで、支那まで砲弾が届く!」なんてな夢のような兵器の概念が示されていたのが、今から70〜80年以上昔。
それが時を経て、アメリカで現実のものになろうとしてるってんだから、科学の進歩が凄いのか時の流れが速いのか。


ちなみに、その本の名前はもう忘れちまったのだが*3、他のページに「殺人光線」の解説記事があった。実験によるとネズミに30分ほど浴びせかけると死んでしまったらしい。1920〜30年代にTIME誌が「殺人光線」を開発したとかいう英国人の紹介キャンペーンをやっていたらしいので、それの又聞き記事か、そうでなければ普通のX線のことではないのかという気がしなくもない。レントゲンは1890年代末には発明(発見)されているので、流れ的にそれを……まあ30分浴びれば死にそうだわな。


そういうわけで、アメリカの秘密兵器がまたひとつ&20年前に見た謎の古文書の思い出が一気にぶり返したよ、という個人的に感慨深いお話。

*1:浮遊型リニアとしては上海リニアやJR東海の山梨実験線が有名だが、浮遊しないリニアモーターシステムはすでに稼働中。例えば地下鉄都営大江戸線とか。

*2:現在建造中のアメリカの次期最新鋭空母か、その次あたりには搭載されるらしい。

*3:穴八幡の古本市で見つけて、当時勤めていた会社に置いてきちゃった