恐怖箱 老鴉瓜
「超」怖い話があり、その必要があったから超-1が行われた。
「超」怖い話が超-1を必要としたのは、最初の一度だけだった。
けれども、超-1を必要としたのは「超」怖い話だけではなく、より多くの人々が、実話怪談の祭典として、著者発掘の機会として、持て余している話を投げ込む場所として、超-1を必要とした。
それに抗わず、求めに応じた。
思えば、「超」怖い話はいつも読者によって突き動かされてきた。
二度の休刊から僕らを引き戻したのは、僕らの意志よりも強固な、読者の皆様の呪いにも似た祈念の賜であっただろうと思う。
そのルールは超-1にも及び、超-1は「超」怖い話の勝手にはできないものとなった。またしても、読者の求めがあったればこそ、超-1は延命したと言っていい。不思議な縁であり、因縁であると思う。
恐怖箱は、その超-1から産み落とされたシリーズとなる。
春発売の恐怖箱 怪医(雨宮淳司)は、発売から一週間で重刷が掛かった。実話怪談の、しかもまったくの新人の本としては異例のことである。
先月末――先週末に発売になったばかりの恐怖箱 蛇苺は、すでに売り切れ店が出ていると聞いた。まさか、とAmazon.co.jpのリンクを辿ってみると、配達予定日が消えて「3〜4日」という曖昧な表記になっている。なるほど。
素人の寄せ集めと侮るなかれ、恐怖箱は努々恐ろしい、という評を頂戴しつつあるのかもしれない。
流石、「超」怖い話の落とし子というべきか。
さて、竹書房文庫の帯はこの数年、次回配本を予告するスタイルになっているのだけど、「超」怖い話Mの帯にて次回配本の恐怖箱 老鴉瓜について予告が載ったので、ここでフォローしておきたい。
老鴉瓜もまた、超-1上位ランカー3人による競作の形を採る。
蛇苺は、超-1/2007の5、6、7位。今回は、予想通り、超-1/2007の2、3、4位によるものとなる。
渡部正和(藪蔵人)、鳥飼誠(PONKEN/ダウン)、矢内倫吾。2007年は1位が空位となった年であるため、これが2007年大会の事実上のトップスリーである。
一応、蛇苺組の名誉のためにも言っておきたいことなのだけど、「んじゃあ、先に順位が低い方を出して、後から上位のほうを真打ちでね」というような、安易な理由でこの組み合わせになったわけではない。これは本当。
蛇苺の後書きでも前振りについて若干触れられているが、ピックアップした6人全員に「これこれこういう趣旨で」と依頼内容と引き受ける意志があるかどうかの確認をしたのが、今年の1月中旬頃の話。挫ける人もいるかもしれないし、本業との兼ね合いもある。また、没だってあるかもしれない。一人70頁以上は書くこと、という条件で足りるかどうか少しばかりの不安は感じながらも、締切を区切って発注した。
ここが重要なのだけど、6人全員に同時に発注し、同時に締めきった。
締切は4月末頃――そう。今年の超-1の講評締切と時期を同じくする。
彼等には余力が在れば超-1も参加は留めない、と伝えておいたら、矢内氏がちゃっかりw超-1にも参加していた、という話はさておき。
4月末、全員分の原稿がすべて集まったところで締めきって、誰と誰を組み合わせてチームとするかを、そこで初めて考えた。
あくまで、内容本位。効果的かつマリアージュが二重にも三重にもなる話を持つ、人と人の組み合わせ。逆に、作風や傾向的に衝突しそうな組み合わせは避けた。パズルのようにあれこれと頭を悩ませた。とにもかくにも、怪医に続くシリーズ化を宣言する巻でもあるし、また、先々このスタイルでいけるものなのかどうかを占う大切な尖兵でもある。夏直前という怪談の激戦区に投入するにたる精鋭でなければならない。
悩みに悩んで「これだ!」という決定版の組み合わせを並べてみたら、それが深澤/原田/つくねという蛇苺組だった、ということなのだ。ホントよ。
じゃあ、老鴉瓜組が出がらしかというと、そんなことはもちろん断じてないわけで、彼等には怪談シーズンの終わりという、これまた怪談を売る商売としては難しい時期*1に殿を務めてもらわにゃならん。
蛇苺、老鴉瓜、どちらも全力。
そういうわけなので、老鴉瓜。
待て、8月末。
*1:最近、怪談本も通年出せるようになったとは言うものの、早めに出したほうが販売期間が長く取れ、時期ものとして店頭にも並びやすいのは確か。怪談本は盆を過ぎるといっきにパワーダウンするので、8月後半〜秋というのが怪談本にとって難しい時期であることに替わりはない。