あいのり総理

神奈川11区の、小泉純一郎元総理の後継は次男の進次郎氏(27)。
その対立候補に、民主党が立てた候補は同じく27歳の横粂氏。
恋愛バラエティ「あいのり」に「将来総理になりたい司法修習生」とかで出てた痛い奴がいたなあ、とか思ったらそれだった。
まず、神奈川11区の前回の数字を見ると、

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1251/kanagawa.html
■2005年選挙得票

  1. 小泉純一郎 自由民主党 前 197,037 当選
  2. 斎藤勁 民主党 新 50,551
  3. 瀬戸和弘 日本共産党 新 11,377
  4. 天木直人 無所属 新 7,475
  5. 羽柴秀吉 無所属 新 2,874  

だいたいこんな感じ。
前回選挙では元レバノン大使*1天木直人が出馬したものの話題にならず、民主党斎藤勁*2もトリプルスコアどころかクアトロスコアに近い数字で負けている。
もちろん、これは郵政選挙の超追い風のときの現職総理大臣の獲得票数なので、進次郎氏がそのまま同じ数の得票があるとはさすがに思えない。
小泉元総理にしたところで、閣僚経験者である実父・純也氏の弔い合戦が初出馬で、その弔い合戦では10万票近く獲得しながら4000票差で落選している。
実父が誰であろうが、地盤看板があろうがなかろうが、政治家というのは有権者の合意がなければなれないものだということを誰よりはっきり示しているなあ、と思う。息子が立候補するから世襲容認だ、という意見があるけど、地盤や後援会を継承しようとも、有権者から認められない限りは親が誰であろうと当選は難しい。小泉元総理の初陣がそれを証明している。
それでも、「あの小泉の」という人気は、マスコミの報道する世界では「全国的に評判がた落ち」ということになっているけれども、神奈川11区は地元でもあるわけで、やはりある程度固いんじゃないかなあ、という気がしないでもない。


で、そういう選挙区に民主党が投じてきたのが、僕が記憶している限り、あいのりでも指折りの痛い奴wwwで、どういうギャグだ、と思った。
一応、供託金を掛けてやる選挙であるわけで、民主党も遊びや冗談ではないつもりなのだろうけど、この候補を民主党が選んだ理由をちょっと考えてみた。

  • 小泉元総理の地盤で自民鉄板優勢だからといって、対立候補を立てないわけにはいかない
  • 相手は世襲の若造(27)だが、ここに重量級ベテラン候補を送って、万一落選ということになったら目も当てられないし、候補の面目丸つぶれ
  • 現職議員でなくても、他の選挙区なら40代でもフレッシュと言える*3が、27歳相手では40代では若さを強調できない。フレッシュさを強調しようと思ったら、同年代を充てるしかない
  • 若手は当然地盤もカバンもないから、何らかの看板があって人気取りができる候補が必要*4
  • 若い世代の共感を得るため、若い世代に人気の番組に出演していた経験があるあいのり候補を連れてきた
  • 一応、東大卒、弁護士という候補に値する建前的な保険もあるので、擁立しなかった他の高齢候補にも言い訳はできる
  • この当て馬候補の落選の可能性は高く、浪人したら再挑戦の機会は恐らくない

ま、こんなとこかな。
よほど大差で負けない限り供託金を失うことはないだろう、民主党の追い風で民主党支部がバックアップするんだからよほどの大差の大負けはないだろう、と踏んでいるのだろうなと思う。


このあいのり候補は、あいのり出演中に「将来総理になりたいけど、親の七光りがないので、そのためのステップとして弁護士になる」というようなことを明言していて*5、弁護士は腰掛け、総理になりたい、ということらしい。
本人のblogも見てみたけど、どうも「政権交替すれば全てはうまくいく教」と非常に親和性が高くて(^^;)、「それになって何をするか」ではなくて「それになるにはどうしたらいいか」を考える、手段と目的が入れ代わってる系の人っぽい。反論しにくい総論できれい事を言うのは政治家の仕事だから構わないけど、それを実現するための手段についての具体的提案はなく、「それを今実現できない相手が悪い、自分にまかせればうまくいく、やり方は後で教える」という取り込み詐欺みたいな論調が目立った。


これは神奈川11区の問題で僕ん所や全国区とは関係ない話ではあるけど、民主党の擁立傾向を見ていると多かれ少なかれこの手の「○○○になりたい*6」や「○○○に文句がある」などまど、役が欲しいか、批判をしたいだけ系の、「政治家になって何をしたい」のかがわからん候補が多い。


二大政党制に限った話じゃないけど、政党というのは「政権交替するためにある」んじゃないんだから、選択肢を提示してくんないと困るというか。

「今までのやり方はダメ。まるでなってない。だが、自分がやればうまくいく。具体的な方法を今言うと手柄を取られるから言わない。自分がやれるようになったら教えるから、まず一回だけでも自分にやらせてほしい」
平たく言うと「白紙委任してくれれば悪いようにさせない」というのが民主党の公約と言っていいのだが、「お前は今の奴に騙されてる」「やらせてみれば俺の良さがわかる」「だから一回だけやらせて」「先っちょだけでも」と、民主党の主張を並べていくと、なんだかタチの悪い男が女に迫ってるみたいに見える(^^;)
「じゃあ、一回だけ試しにやらせてみよう」
ということになって、うまく行かないとなると今度は「前の奴の不手際のせい」「前の奴が悪い」「それはお前が望んだこと」「俺のせいじゃない」と言い出したり。


民主党女性有権者の支持が少ないらしい。
今回も有名人や若い男を連れてきて女性有権者の支持を集めようとしているが、そういう人気取りは女性有権者を舐め腐ってるとしか言えない。女の子っていうのは、自分が舐められてるバカにされてるっていうのを、物凄く機微に察知する生き物だと思う。
挙げ句に「一回やらせて」と連呼されたら、生理的にどうよって気がするんだけど、どうよ(^^;)


民主党はこれまでのところ、外交・安全保障政策についてはなにひとつ正論が出ない。*7
総論で夢を語るのは幼稚園児でもできることで、「そのためにできる具体的な何か」が出てこないうちは、民主党は人気取りと利権配分の衆愚党としか言えないような。


外交と安全保障は、それを充実させてもメリットは実感しにくく、それを退行させると怒濤のように不安定化が進み、最悪の事態が起こってみないといつ失敗が始まったのかが理解できない。
地震なんていつ起きるかわからないもののために、堤防やダムの壁を分厚くするのは金がもったいない」
「火事なんていつも起きるわけじゃないんだから、消防署に消防車を並べておくのは無駄」
「犯罪なんて自分が巻き込まれることはほぼないから、警察官は減らしていい」
だいたいこの論調の延長線上に「安全保障の軽視」があるんだけど、やっぱり一発食らってみないと方向転換はないのかもしれないと思った。
テポドンが日本列島を通過したとき、「命中しなかったら大したことない」という論調が結構あったんだけど、むしろ「日本のどこにでも届く」ということを考えるべきで、それ考えたら拉致と核・ミサイルは同列以上に考えなければいけないと思うんだけど、そっち方面への資本投入に抵抗感があるのって、やっぱおかしいよなあ、とか思うのだった。


僕は世界が平和じゃなくていいです。自分が安全ならそれでいいです。
と、安全保障について言うと、だいたい反対されて「世界が平和でなければ」「自分だけ安全ならいいのか」と言われるんだけど、経済については逆に「世界はどうでもいい、自分だけ潤ってることが重要」というのが正論になってしまう。
人間て都合がいい。


ところで、あいのり総理は、えーと、まあ平均的な民主党候補ですね、ということで以上。

*1:官僚から落ちこぼれた人らしい

*2:確か参院からの鞍替えだったような。

*3:大概現職議員は50〜60以上だから

*4:薬剤肝炎被害者や薬害エイズ被害者など、公務を遂行するにあたって健康に不安がある人間を擁立するのは、どうも納得いかない。小沢代表からしてそうだけど、いざというときに「体調不良」は、政治家には通用しないのでは?

*5:あいのりでそれを発言していたログが残ってた。http://wwwz.fujitv.co.jp/ainori/st/st311_cnt.html

*6:所謂ひとつの大臣病だよねw

*7:お、と思うような主張は大概は保守寄せパンダか傍流の発言で、党としての総意になっていない。去年の大連立話とか、代表と執行部すら意思の疎通が取れてない