冷凍インゲン

このエントリに限っては、ソースをまったく精査しない妄想の類として読み流してほしい感じ。
あくまで、思考実験ということで。


昨今、「毒米」とか「毒餃子」とか「毒インゲン」とか、毒入り食品の話題に事欠かない。で、こうした毒なんとかを手繰っていくと、「輸入食品」もっと言えば「中国製加工食品」への批判に繋がっていく。
僕は保存食を作ること*1が好きなので、自分用に冷凍加工食品を買うことってあんまりない。*2


ほんで、毒餃子と毒インゲン。毒餃子に関しては中国国内での毒物混入が疑われた。中国側は日本国内での混入を疑い、中国国内での混入については否定していたが、実際に日本から回収された後の毒餃子が中国国内の一般販売で出回り、中国国内からも犠牲者が出たことで、中国はメンツと反論の正当性を失った。
今回の毒インゲンは、1点のみ、誤混入のレベルを越えた量、袋に穴、という要素があり、日本国内での混入の可能性は高い。
誰がやったかというよりは、それによって誰が得をするか、という視点で考えてみる。


まず、真っ先に思いつくのは「ロシアンルーレット的な愉快犯・便乗犯」の類。社会を賑わす事件についてあれこれ報道が為されれば、「それと同じことをすれば、自分のしたことが注目を集め、話題になる」と考え、誰かが先んじてやらかしたことに便乗し、真似をする。
今年で言えば、秋葉原通り魔事件の後に同様の通り魔事件が頻発したことは記憶に新しいし、硫化水素自殺もこの範疇に入れていいと思う。それと、秋葉原通り魔事件と関連するところでは、「ネットで犯罪予告」の類も同様だ。
これらについては、秋葉原通り魔事件について述べたときにも触れたように、「手口についての詳細な紹介」と「マスコミによる大々的な報道」「話題になり、注目を集める」という欲求を満たすための手段として創造性のない人が真似てしまうのではないかと思う。
まとめると、「同じことをやれば注目される」という認識の元に、毒インゲンは意図的に作られた、犯人は目立ちたがり屋の日本人の便乗犯、という可能性。


次に思いつくのは、「食品を使って社会騒擾を狙ったテロ」というもの。食品テロが便乗犯・愉快犯と共通するのは注目を集めたいというところで、共通しないのはそこに何らかのイデオロギーがあるというところ。
ただ、現在のところテロの可能性は低いんじゃないかなと思う。
拉致にしてもテロにしても、「理不尽な暴力行為」に付けやすいレッテルであるせいか、本来の意味をすっ飛ばして使われることが多いのだが、テロ=テロルというのは「政治的要求を達成するための強要・脅迫行為として、心理的恐怖を励起・想起させる暴力行為」であるわけで、政治的要求を伴わないものはテロとは呼ばない。
今回の毒インゲン、前回の毒餃子などもそうだが、イデオロギーに基づいた犯行声明というか政治的要求の類がないことから、これらはテロに分類しない。
まとめると、何らかのイデオロギーに基づいて、日本政府・日本人に政治的要求を突きつけるためのテロとして行われたテロ行為、という可能性。
上述しているように、僕はこれが何らかの意図を持ったテロの可能性は低いと思う。


次に思いつくのは、テロに若干準じるが、中国産食品に対する嫌悪、中国産食品を唾棄、これらを排斥する気運を高めるために行われたというもの。この場合、誰がそれで得をするかと言うのは一概に特定しにくいのだが、

  1. 国産の食糧自給率を高めるという目的のため、中国産食品に対する信頼を落とす必要がある誰か
  2. 中国産食品を輸入販売している企業に対して何らかの怨みを持つものによる犯行
  3. 同様に中国産食品を輸入販売している企業の信用を低下させることで得をする誰か
  4. 世論の右傾化*3を背景に*4、中国を「無制限に批判・中傷することを許された公敵*5」と定めて、排斥運動を仕掛けたい誰か

などなど。まあ、最後の項でびっしり書いたw、「今の中国なら思う存分悪役にしてよい、みんな中国のせいだ、また中国か、と思ってくれる」というのを意図した誰かが、最初に述べた「注目を集めたい便乗・愉快犯」的な意識と結びついた日本人による個人的な犯行の可能性は高い。


これらとは別に、斜め上系で思いついたのが、毒インゲンに関しては、中国が犯人というもの。これはかなりアクロバティックな陰謀論だと自分でも思うんだけど……。犯行声明は決して出ないだろうからテロには分類できないwけれども、「誰が得をするのか?」を踏まえた上で疑った結果出てきた、犯人像のひとつということで。
毒餃子・毒ミルク・毒ビタミン剤・毒ペットフードその他の「製造国で毒物が混入した」事件が頻発し、中国は食糧・食品輸出国としての国際的信用が大きく下落している。安い食品・食材によって日本以外の各国の食事情に影響を与えてきたことから、これらの「中国製毒入り食品問題」というのは、飯にうるさい日本人に限った話だけではなく国際的にも大きな問題になっている。*6
これらの問題について、中国は国内の引き締めや生産状況の改善など早急な対応を強いられているわけなのだが、「安い人件費」「安全性維持のための行程を飛ばして得たローコスト」である以上、そこを改善すると今までと同様の国際競争力は維持できないし、景気減速は中国国内の不満を押し上げることになってしまうので、中国政府としては容認し辛い。
だったら、「原因は中国じゃない」というアドバルーンを上げることで責任逃れをするというアクロバティックな対応を取ったとしたら。
毒餃子事件などでの中国の主張は、「毒物は日本国内で混入されたもので、製造元で混入したわけではない」というものだった。これを裏付けるには、「製造時には問題がなかった中国製食品が、日本国内で日本人の犯罪者によって毒物汚染された」という事実を作ってしまうのが手っ取り早い。
毒餃子で中国国内で混入されたとされるメタミドホスについては、日本は通常のガスクロマトの他に世界に何台もないような超大型施設まで使って「出所は中国」と特定してきた。だったら、日本国内に流通している日本国内で手に入る農薬を使い、日本国内(小売り段階)で毒物を注入してしまえば、「日本で犯行が行われた」という事実を作り出すことができる。
毒インゲン事件が日本国内での日本人による犯行だということになれば、少なくとも「中国製食品に問題があったわけじゃない」ということを言い張れるわけで、若干の信頼回復に……


うーん、無理があるwww


どう転んだところで、加工食品の産地確認意識は高止まりしているというか、「生産者や加工/販売企業を無条件に信頼する」というところには、戻っていかないんじゃないかなー、という気はする。
食品の産地表示を徹底するという政策のうち、加工食品の産地情報についての表示義務を求める法案が、与野党各党が出ている。これは良いこと。
現在は加工食品については、「原材料表示の義務」はなく、「加工地表示」だけがされている。例えば中国産の材料を使っていても、日本国内で加工されたものは「国産」と謳えてしまうわけだ。消費者も販売者・製造者が日本なら、国産かな? と思ってしまうというか、それ以上を疑えない。*7
東京では都条例の施行により、2009年6月1日から同様の「加工食品の原材料産地の表示」が義務づけられることになっている。地方自治体の条例で対応できる*8んだから、国会での法案成立を待たないで各地方自治体はどんどん対応すべき。
そういえば、食品の産地表示の徹底と、それに続く加工食品の原材料表示の義務化というのは、実は昨年自殺に追い込まれた故松岡利勝農相がライフワークとして推進していた政策のひとつらしい。農家出身で農水族議員として農水畑を歩いてきた農政のエキスパートとしての白松岡の悲願は、彼が死んだ後になってから彼を死に追いやった野党の手柄にされようとしているのかと思うと、ちょっと気の毒だ。


それにしても、「日本人は原爆落とされても怒らないけど、食い物に絡んだ嫌がらせをすると激しく怒る」というジョーク*9は、ありゃジョークでもなんでもなくホントだよな、と思わないでもない。
日本の風土*10に基づく日本人の気質には「清潔好きで、潔癖で、神経質」というものがある*11
食べ物が腐りやすいから発酵食品や乾燥保存食が発達し、腐敗による食品の喪失を恐れるが故に公衆衛生が早い段階から発達し*12、そうであるが故に「食べても大丈夫なものかどうか」に関する要求精度が高い。
日本人が食い物の安全性にうるさいというのは、そういう歴史・風土から来ている問題なので、今後も変わらないだろうなー、と思う。
戦後、分業が戦前以上に発達し*13、「生産者・加工業者への全面的な信頼」が続いてきた今までは、生産者のプライドへの信頼という形で消費者が製品に対して疑念を抱く必要がなかった。
が、プライドや責任感を持たない生産者が増加し、そうした生産者のプライドに依存して信頼することができなくなってきた昨今、消費者自身が自分で気を付けて確かめる、という本来的にしなければならなかった「一手間」を再認識する必要が出てきたのではないかなあ、と思う。






……ここまでが枕で、そういうわけで僕んちの椎茸は順調ですw
現在までに12本の発生を確認、そのうち3本はたぶん今週末までに食いでのある大きさになりそう。

*1:保存食を食べるのも

*2:あ、ブルーベリージャム用の加工原料としてのブルーベリーは冷凍品を買ってるなw あれは生がほとんど流通してないし、輸出元の8割以上がアメリカ産。

*3:右傾化の定義は難しいが、愛国主義=右翼というのは本来は正しくない。保守=右というのも正しくない。街宣右翼のイメージが強いため、イデオロギーを持った暴力組織と思われがちだが、それも違う。フランスには愛国主義的左翼もいる。が、「危機に際して、異分子を排除し、同族の利益を優先する」という排他的側面が強調されるものについて、「右」「右傾化」という定義が当てはめられているような気がする。ので、ここではそういう意図で使う。

*4:またはそれを押し進めたい誰かがいるとか

*5:もっとも、現代日本ではこの「無制限に批判・中傷することを許された公敵」には、権力のトップであるところの政府与党総理大臣が当てられることが多い。何しろ、どんなに批判したって、報復として殺されることはありえないから、安心して批判できる、という甘えに基づいているのではないかと思うw 同じことを共産主義国家や独裁国でやったら、あっという間に社会的にも物理的にも抹殺されちゃう。

*6:中国食品の安全性をアピールしたイギリス政府の閣僚が就任直後に倒れたりとかw

*7:Great Valueなど、大手スーパーが販売する格安自社ブランド商品は、こうした「加工は国内だが原材料は不明」や「販売者は国内だが、製造地は不明」という製品が多いのが不満というか不安。卸を通さずに生産者・製造企業と小売店が直接販売契約を結ぶことで、販売価格を抑えるという営業努力も織り込まれているので、安い商品=全てが外国産原材料の加工品とは断定できないけれど。

*8:東京はこうした「地方自治体条例による独自対応」っていうのが昔から多くて、「夜10時以降は大型自動二輪車の環七内側への乗り入れ禁止=カミナリ族対策w」などいろいろある。

*9:各国が日本を怒らせようと、ミサイル撃ったり原爆落としたりいろいろな嫌がらせをするがなかなか日本人は怒らず、逆に国際的には問題にならないような些細な食品関連のトラブルに激しく反応する(BSEに関連した輸入牛肉問題とか、反捕鯨問題とか)ことについて揶揄したジョーク。出自はわからないが、2chではしばしば見かけるw

*10:高温多湿で食品が腐敗しやすい。

*11:この潔癖で神経質というところが、工芸品の異様な精度と精密機械の発達に寄与している、という話を工業系のエッセイ本で読んだことがある。

*12:上水道の発達、下肥の活用、衛生習慣の普及など

*13:実は、生活分業というのは江戸時代以前から日本では発達していたようで、昔から生産から消費までを自分だけでやっている人ばかりだったわけではない。自前で生産が難しく、消費が主体になる都市生活者が増えるに従って、生活分業は増える。都市生活者が増え、化学製品を加工途中に使用するようになった近代・戦後になってから問題が出てきただけで、生活分業そのものは昔から肯定されてきたと思う。