全権委任法成立前夜〜議員立法の禁止と民主党のナチス化

asahi.com朝日新聞社):民主、議員立法を原則禁止 全国会議員に通知 - 政治
http://www.asahi.com/politics/update/0919/TKY200909180379.html

本日のネタ。
民主党は、議員立法を原則禁止にするらしい。
議員立法は、所属政党にお伺いを立てず、党内有志や超党派での立法を提案するものだが、これが原則禁止になることによって「党としての立法=政府立法」以外はなくなる。党内有志が会合を持つ意味を削り、超党派による立法案作成の機会を封じることで、野党との連携の機会を封印する、という党内掌握の狙いがあるんじゃないかと思われる。
つまり、今後は「党派の主張を越えて、これだけは決めていかなければ」というような、立法府議員の良心を突き動かすような法案*1は、「政府=民主の手柄になるもの」以外は提案されなくなる。


民主党立法府多数派(与党)と行政府の一体化を旗印に、官僚からの情報を会見や報告などで外に出させない、という方針を示している。これによって、政府与党以外の野党、及び政府や行政(官僚)を監視すべき立場にあるはずの国民にも、そうした情報が入ってこないことになる。
確か、「顔の見えない官僚が恣にするのを防ぐ」というのが民主の公約にあったような気がするのだが、あれは全て気のせいで、実際には「官僚の口を塞いで余計なことを言わせない、官僚の持つ情報は政府与党が独占し、野党に検討材料を与えない。国民は知らなくていい」という、情報支配的専制政治を始めるつもりらしい。


今回の議員立法の禁止は、つまり民主党執行部、しいては鳩山=小沢の了解なしには、民主党所属議員は一切の立法を行えないということになるわけで、民主所属の新人議員、末端議員はただの「議会専用投票マシン」に過ぎなくなる。


この「立法権を政府(行政府)が掌握する」というのは、歴史的にもよろしくない前例がある。
1932年、ナチスが選挙で第一党になったとき*2立法権を掌握し、行政府によってのみ都合のよい法案を次々に実現させていった。
その最たるものが全権委任法
民主党が唱える「議員立法の原則禁止」「立法機会の党=政府への集約」は、ナチスによる全権委任法に通じるものを感じる。


ところで、この全権委任法ができた当時のドイツの議席配分を見ると、ナチス*3が288で、最大野党のドイツ社会民主党が120。
若干の誤差はあるにせよ、現在の日本における与党民主党と、野党自民党議席配分に非常に似かよっている。


アメリカなど、交替可能な二大政党制+大統領制を採る国では、大統領の権限が大きい分、大統領の行政権と議会の立法権、裁判所の司法権は厳密に権力分散されている。
ナチスドイツは、今次の民主党と同じく「政策立案と遂行の迅速性」を訴えて議会第一党となったナチス党が行政府として、立法権を掌握するべく、全権委任法を成立させた。


今日、ヒトラーの悪辣なイメージが強いが故に、それに続く多くの独裁国、独裁者、独裁制というものは「看過すべきではない悪の政治体制」という認識を得ている。実際のところ、特定個人に政治権限*4が集約することは、民主主義的にはあまりいいこととは言えない。民主的な手続きを持ってそれが選ばれたにせよ、選ばれた勢力の頂上の人間が、残る全てを独裁することは不平等性から免れ得ない。
立法と行政の一体化は、それが「善意と正常な判断力を持つ正気の人間一人」によって運用されるのであれば、それは最大の功績を生み続けるだろうけれども、それが「善意ではなく独善だったら?」「正常な判断力を持っていなかったら?」「正気ではなかったら?」「利害衝突によるパージに使われたら?」などを考えると、全てが逆の効果を生む。
近代では、毛沢東が中国に壊滅的な飢饉をもたらした例や、金正日体制が北朝鮮をどんな状態にしてしまっているか、などから察することができる。


故に、「ヒトラーを選び出すほど最悪な政治体制だが、それでも、それ以前のどの政治体制よりもマシ」な民主主義があり、「独裁者という失敗」を排除できる仕組みが保障されてきたわけなのだが、今回の民主党による議員立法の禁止や、官僚=行政府の情報を政府が独占する体制作りというのは、どう繕ってみても全権委任法の別名義であるようにしか思えない。


以前、小泉元総理をして民主は「独裁者だ。ヒトラーだ」と揶揄してきたが、今回の民主党ナチスっぷりを見るに付け、真の独裁体制の凄さを思い知らされつつある気がした。*5



民主党ゲッベルスは、まだ明確にその名前を明らかにしていないけれども、2000年代初頭あたりからのマスコミによる「情熱的空気の醸成」などを見るに付け、民主党は確かにナチスドイツの歩んだ道を正確にトレースしているように思える。*6
誰がシュペーアなのか、誰がレームなのか。


凄いなあ。
生きてるうちに、日本にナチスの再降臨を見ることになるとは思わなかった。



本日のオマケ。

民主と言えば鳩山首相
鳩山首相といえば友愛。
友愛といえば平和。
平和と言えば鳩。
鳩と言えば寺社。
ということで、友愛を掲げて日本の変革を目指す民主党を寿いで、「民主党主導の元、日本が向かっていくのであろう未来」をイメージして、平和の象徴である鳩が、夕暮れのお寺の屋根を飛びかう様子をデザイン化してみた。


*7
民主神聖旗(2009〜)

*1:改正臓器移植法水俣病救済特別措置法など

*2:ナチスは民主的な、しかし熱狂的な支持によって、民主的に第一党になった。

*3:国家社会主義ドイツ労働者党

*4:行政権者が同時に立法権を掌握している状態=独裁であるわけで、個人以外でも中国のように「共産党による独裁」が行われているケースもあるし、独裁という言われ方はあまりしないにせよ、行政権と立法権世襲の王が掌握している国もある。

*5:少なくとも小泉元総理は「抵抗勢力の口封じ」や、「自党議員からの立法権簒奪」などはやらかさなかった。

*6:そうえいば、最近、「不都合の多い事件が起きた直後に事務所が焼ける政治家」が民主からも何人か出ているようだが、ナチスも国会議事堂放火事件をなんかに利用してたっけな。いずれ、民主党政権に対する不満を持った「個人」が国会議事堂に放火し、それを「自民によるテロ」と声を荒げて(みせて)、本格的な全権委任法を成立させる、という筋書きかもしれんなあ。そうなったら公共の不安を煽る言論の規制も堂々と行われるようになり、blogの多くは「実名制」という規制が行われるようになるんではあるまいか。

*7:鳩山会館の門扉などでも確認できる鳩山家の家紋は「尻合わせ三つ結び雁金」なのだそうで、これは「雁」であって「鳩」ではない。あれをして「鳩の家紋」と言うマスコミがいたら(まさかいないと思うけどw)誤解か無知か勉強不足。雁は古代中国にあって幸せを運ぶ鳥(無事を故郷に知らせる鳥)として知られる。卍紋は日本の地図では寺社仏閣を表す記号で、明鏡国語辞典によれば「仏の胸などに現れた瑞相。もと古代インドのビシュヌ神の胸の繊毛をかたどった吉祥の相という」とある。つまり仏陀/ビシュヌ神の大変有り難い胸毛(違)。ただし卍は時計回りで、ナチスドイツの党旗に記されたハーケンクロイツは左回り。この卍とハーケンクロイツの混同と忌避は英語圏では特に強いようで、Microsoftの規定する一部のフォントなどでは、卍はハーケンクロイツを想起させるとして登録されていなかったりするらしかったり、外国人が日本の地図を見て、上野西日暮里あたりや奈良京都がナチスでいっぱいwであることに驚きを感じたりするらしい。