煙草考

前にも同じテーマで書いてるけど*1、税収不足の折、たばこ税増税の話が本格的に進みそうなので、予想しうる対抗策など考えてみる。


1本につき10〜15円増とすると、現行で1箱20本入り300円前後の煙草は、軒並み500〜600円前後と倍額近くになる。
これは紙巻き煙草の例だが、小粋のような刻み煙草や、パイプ用の煙草なども同様同率で適用されるんだろなと思われる。
それを前提として、ちと考えてみる。

業界の対応

お上から制限が加わると工夫で応酬、というのは江戸の昔からの伝統なので、今回の1本10円増、というのに対しても、なんらかの業界側対応はあるだろう。

  • 1箱の本数を減らす

これは既にそういう趣旨の(たぶん)ものが出始めていて、1箱20本ではなく、1箱10本とか5本とか3本とか12本とかにして、1箱あたりの単価を減らす、という方策に出るのではないか。
例えばKENT CITRIC Menthol 1*2は1箱20本入りキングサイズで300円。
これが10円値上げで500円、15円値上げだと600円になっちゃうわけだが、10本入りにすれば従来とほぼ同額の250〜300円に。本数は減ってるけど、頒布単価は同じなので心理的には「減ったなあ」と思いつつも買えない金額ではない。
今までと同じ本数吸おうと思ったら、今までの倍掛かることに変わりはないが、消費者心理としては「本数半分、値段は今までと同じか若干安いくらい」なら、諦めが付くw

  • 1箱の本数を減らして1本を長くする

スーパーキングサイズとかいって、キングサイズの1.5倍くらいの長さでありながら本数は半分。実質2/3程度の量でありながら値段は半分、みたいな。
でもすぐに折れそうだ。ペーパー厚くしたら紙の味が強くなるし。

  • 1箱の本数は同じだけど直径が細い

1本の太さを今の2/3くらいにすれば、必要な葉の量は半分になる。これによって税以外の単価部分を下げて、値段を今の1.2倍程度に据え置き、とか。
もしくは、太さはそのままだけど、中に芯wが入ってて、嵩ましされてるとか(ry

  • 今までより燃焼速度が遅い煙草

日本の紙巻き煙草は、非常に燃焼速度が速くて、あっという間に燃え尽きてしまう。一度火を点けたら途中で火が消えることもない。これは適度に隙間が空いている為で、酸素不足で火が消える、ということがないせいらしい。あっという間に燃え尽きてしまうから、次々に買わせられる、というのもあるのかもしれない。
だから、葉の密度が高くて、なかなか燃え尽きない煙草というのを出せば、「お得感」から売上が落ちないで済むかもねー、と思ったりもする。


ともあれ、業界による対応は、「消費者が手に取るときの金額を、できるだけ今までと同程度に抑える」という方向で、本数を減らしたハーフサイズを出してくるか、逆に本数を多めに入れて値段もその分お高いです、みたいな商法に出るかどっちか。


喫煙者の対応

これは根本の部分で選択肢が二通りあって、

  • いっそ禁煙する
  • それでも喫煙する

のふたつ。
前者「いっそ禁煙する」というのは多いんじゃないかという気もする。ライトな喫煙者で、「いつやめても困らない、あってもなくても困らない」という程度の人は、一斉に辞めるか、完全に辞めないまでも今までに比べれば購入スパンが長くなるというかあまり吸わなくなる。
彼等が辞める分だけ、たばこ税増税によってアテにしていた税収はむしろ減るだろう。なんとなく吸っている人間は、なんとなく辞められるので。

もう一方、それでも辞められない人間はどのように対応するか。

  • 頑張って量を減らす

一日に吸う数を減らす、とか。結果的に税収減になるか、税収額は変わらないが、煙草農家は収入が半分になり、煙草農家が衰退するとか。

  • 安い煙草に乗り換える

国内の煙草農家が衰退したのと入れ替わりに、インド、中国他の安い労働力によって作られた外国産煙草の輸入が進むとか。結局、安い*3もので一層健康被害を拡大させるか、まずさに絶望して禁煙組にシフトするか。

  • 喫煙スタイルを変える(1)シガー

紙巻き煙草を止めて、シガー(葉巻)に乗り換える、とか。
シガーの場合、紙巻き煙草のように短時間に吸いきるのではなく、火を点けて、一分で一口くらい吹かして、火が消えたらまた点けて……という感じで、1本当たりの消費に掛かる時間が非常に長く、一般的な紙巻き煙草よりも総じてお得。
ただ、香りがきつく、手順作法もいろいろあるので、「ちょっと一服」には向かない。

  • 喫煙スタイルを変える(2)パイプ

紙巻き煙草を止めて、パイプに乗り換える、とか。
パイプはシガー同様、ゆっくり吹かすもので、火を点けたり消えたりとのんびりくゆらすもの。煙草の葉の消費量で言えばやはり紙巻き煙草に比べて断然ゆっくりなので、単位時間当たりで考えればかなりお得。
ただ、パイプの手入れや吸い始めるまでに掛かる儀式的なw準備など、「ちょいと一服」には向かない。気の短い日本人が、ほんの数分の待ち時間のためにくゆらすのには向かない。

  • 喫煙スタイルを変える(3)煙管

紙巻き煙草を止めて、煙管に乗り換える、とか。
煙管はパイプに似て、刻み煙草を詰めて吸う(吹かす)が、パイプに比べて火皿に収まる葉の量が圧倒的に少なく、また葉もパイプや紙巻き煙草に比べてずっと細かく刻まれているため、一口二口ですぐに吸い終えてしまう。その点では紙巻き煙草よりも燃え尽きるの早く、繰り返し何度も楽しめる。
が、連続喫煙しようと思ったら、着火の手間が何度も掛かって煩わしい。パイプほどではないが一服までの準備がかかり、メンテナンスも必要。

これは、紙巻き煙草を自分で巻く、というもの。一般的なホビーではないが、日本でも紙巻き器や専用用紙、フィルターなどが手に入るので、不可能ではない。
準備に若干手間取るが、予め何本か作っておいてヒュミドールみたいな煙草入れで持ち歩くっていう人もいるようだ。

  • 喫煙スタイルを変える(5)根元まで吸う

(2)〜(4)は、その気になれば「いつも吸ってる煙草を解して吸う」ということもできんこともない。*4
だがそれ以前に、だ。
喫煙者、それもチェーンスモーカーほどそうなんじゃないかと思うんだが、みんな煙草を根元まで吸ってない。全体の長さが10cmあるとして、3cmがフィルター。火を点けて3cm吸って、残り4cm近く残したままひねり潰して消してしまう。そういう吸い方をしている人は珍しくない。
昔、知り合いのライターさんでやっぱチェーンな人がいたのだが、火を点けて1cmしか吸わず、次々にひねり潰して次を吸っていた。あれだと、1箱のうちの1/6も吸ってないのではないか。
昔、なんでか「フィルターぎりぎりまで吸わないで、フィルターから3cmくらい残すのが常識」みたいに言われたことがあった。確かバブルの頃に定着したミョ〜な文化ではなかったかと思う。そのせいなのか、僕の回りで吸う人は、やはり3cmくらい残して消してしまう人が少なからずいるような……。
あれを、心を入れ替えてw根元まで吸えば、今までの倍を払っても今までと同じだけ吸えるよ!


(1)〜(3)は「周囲にやっている人がいる」という安心感がない限り、人前で吸うのはちょっと恥ずかしい、というものでもあるかもしれない。
いつだったかキムタクがシガーに凝っていたとかで、それに倣えでシガーバーが流行ったことがあった。
が、あれは何しろ香りがキツイので、専用のシガーバーや自宅でならまだしも、喫煙可の店で吸う人はまずいないし、同じヤニ食いでも困惑することすらある。となると、やはり一般向きではない。

工夫はいろいろな形に及ぶだろうが、「簡単便利合理的」という現代日本人のせっかちで理に適ったものが好きな性質を満たす代替方法には、なかなか画期的な方法がない。一番楽なのは「根元まで吸え」だとは思ってんだけど……。




煙草と酒に関してはどうにも常に賛同を得られるテーマではないんだけど、今回の値上げ幅だと「仕方ないから受け入れる」では、業界防衛と喫煙者の喫煙生活防衛は厳しいのではないかと思ったりもする。


酒造業界、特にビール戦争と呼ばれる攻防戦は何をもたらしたかというと、「ちゃんとしたビール」の壊滅……とはいわないけど、激減をもたらした。この場合のちゃんとしたビールとは、「麦とホップと水で作ったビール」のこと。
ビールへの増税に対向するために発泡酒が出て、その他の雑種が出て、今は「発泡性リキュール」というのが幅を利かせている。
これは要するにビール界のカルピスウォーターというか……焼酎*5に、ビールっぽい味と泡を足しただけのものというか、最初から作って缶詰瓶詰めしたホッピーというか……。
なんというか、発泡酒までは許せたけど、その他の雑種あたりから僕はもうついて行けてない。あれはビールじゃないし。
でも、増税の絨毯爆撃は、「似たような感じのもっと安いの」への需要シフトを生み出し、結果的に「ちゃんとしたもの」が駆逐されてしまっている。工夫の代価、業界生存と引き替えと言われりゃそうなんだけど、腑に落ちない。


なんつーか、嗜好品=贅沢品が真っ先にターゲットになるのは、致し方ないのかもしれないけど、結果的にそれは嗜好品の品質をも落とすということに繋がるんではないかい、という気がする。
安物買いの銭失いの諺にもあるように、ちゃんとしてないまがい物に淘汰される、というようなことでいいんだろかと……。



ところで、以前買ったハッカパイプ。
吸い口を噛む癖のせいで、吸い口は既にぼろぼろ。
今度買うときは金属製マウスピースのにしようと思う。
結局、安いもの、ニセモノは長持ちしないのだ(´Д`)

*1:つい最近のような気がしていたけど、実際には2008年の3月頃。しかも、やっぱり今回と大体同じようなことを書いていたw

*2:2008年発売。このミカン味の煙草は案外気に入っていて、アパラギオイルでさらにオレンジにブーストかけたりもしている。

*3:煙草の場合、安い=粗悪と言い換えられる

*4:無理目ですw

*5:リキュールです