(今日こそ)はやぶさ帰還




小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル帰還、NASAも観測 | 太陽系 | sorae.jp
http://www.sorae.jp/031004/3942.html
http://www.nasa.gov/topics/solarsystem/features/hayabusa20100609.html

日本国内だけの注目ではなく、地球外の小惑星から無人探査機が試料を持ち帰るのは地球史上二度目*1という。
そして、はやぶさのミッションは宇宙開発史10大事件のひとつに数えられてもいるという。
奇しくも6/11にソーラーセイル実証機イカロスが無事セイルの展開に成功し、地球から離れて加速していく実験に入ったところ。ソーラーセイルは太陽からの光子圧を受けて加速する宇宙機で、理論上は無限に加速していく。長くSFの定番ネタだったのが、ここへきて実現への第一歩を踏み出した。どこかがやるだろうと思っていたけど、日本の宇宙開発がそこに手を付けるとは思っていなかったので、計画を知ったときは結構驚いた。
はやぶさの帰還とイカロスの船出が時を同じくするというのは、なんと粋な計らい、なんという偶然。*2
また、6月のこの時期というのは日本の宇宙開発史にとって記憶に残るイベントが重なるようで、月面探査機「かぐや」が月面探査を終えて月に落下したのも2009年6月11日のことであった。
http://www.sorae.jp/0249/3940.html


さて、はやぶさの帰還。
NASAも本気なようで、地上からの観測以外にDC-8型観測機を飛ばして、はやぶさが大気圏突入する様子も観測するらしい。




はやぶさ」大気圏突入前、地球撮影に挑戦 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://bit.ly/dCJ9kG


カプセル分離がはやぶさの最終ミッションの予定だったのだが、カプセル分離後に姿勢変更して、大気圏に突入して燃え尽きるまでの間に、はやぶさ搭載のカメラで地球を撮影することになったらしい。
「――7年ぶりに戻ってきた故郷の姿を最後に撮らせてやりたい」
川口淳一郎教授(宇宙研)のファイナルミッション。

はやぶさイトカワ着陸時に、イトカワに衝突している。カプセルのカバーは無事閉まったが、はやぶさからカプセルを分離できるかどうかは、まだわからない。
分離後、一秒に10cm*3の早さでカプセルが離れていくのだが、その後、残った燃料を使って姿勢を変更し、カメラを地球側に向けて、地球を撮影するらしい。燃え尽きてしまう、その最後の瞬間までにうまくいけば、はやぶさの「眼」は再び地球を「見る」ことができる。
分離していくカプセルを映すこともできる、かもしれない。


はやぶさ、最後のミッション(漫画)
http://drawr.net/show.php?id=1478887





http://www.google.co.jp/
http://www.google.co.jp/search?q=%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%95+%28%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F%29&ct=hayabusa10-hp&oi=ddle

Googleのロゴはその時々の風物詩やイベントに合わせて変更されることで知られているが、今日ははやぶさロゴに変わっているらしい。
ロゴをクリックした場合の検索結果は「はやぶさ (探査機)」に関すること。





http://www.aoshima-bk.co.jp/kokuchi/hayabusatan/index.htm
http://bit.ly/b43xJm (Amazon)

青島文化教材社が緊急発売した『小惑星探査機 はやぶさ』のプラモデルは、1万個が製造されてつい先頃(この6月)に発売されたのだが、既に1万個完売しているらしい。ちょっと凄い。いや、僕も買いましたが。
さらに、しきしまふげんの原画に基づく『擬人化フィギュア はやぶさたん』も発売されるらしい。こちらは10月発売。青島文化教材社、なにやってんだよw ……思わず勢いでポチっちゃったじゃないかよw
フィギュアとか買わない人なのに! どうしてくれるんだw



ある一定以上の年齢のヲタ……いやさ、宇宙マニア、宇宙開発マニアの共通言語というのが幾つかある。
ちょっとネタバレになるけど許してほしい。
昭和40年前後生まれの世代だったら、『宇宙の彼方に行って、苦難を乗り越えて地球に戻ってくる』というテーマのアニメーションに心躍らない、はずがない
それは、はるかイスカンダルから放射能除去装置コスモクリーナーDを得て帰ってくる「宇宙戦艦ヤマト」であったり。



また、遠宇宙で敵性宇宙生物との死闘を繰り広げた末に、地球と5万年もの時間の差*4に引き裂かれてしまった二人のガンバスターパイロットが、5万年も過ぎた後の地球に帰還する「トップをねらえ!」であったり。*5
5万年も過ぎて、自分達が知っている人はみんな死んでしまっている。自分達を知っている人も、それどころか、人類はもう絶滅してしまって残っていないかもしれない。誰も自分達を覚えていないかも。夜の地球には、何一つ明かりはなく文明の痕跡が見えない。
そんな絶望の帰還。しかし、パイロットの前に文字が浮かび上がる。街灯や道路灯、そういったもので文字が描かれる。遙か遠く、宇宙の果てから戻ってきた英雄を迎える言葉――。

















今夜23時、僕らのはやぶさにもこの言葉を掛けてやって下さい。

















そして、はやぶさは帰還した。
豪州ウーメラ砂漠の上空で、-5等星の流れ星になった。
そして――――――燃え尽きた。


(写真:USTREAM

(写真:読売新聞)


はやぶさ大気圏突入、そして焼失の瞬間(USTREAMの録画)
http://www.ustream.tv/recorded/7634995

DC-8空中ラボラトリーからの様子(NASA


はやぶさから分離されたカプセルは、ビーコンを発しながらパラシュート降下している。
たぶん今頃、発見されている頃だろう。



おかえりなさい。はやぶさ










はやぶさは最後に5〜6回、シャッターを切ったらしい。
長時間露光で撮影された地球がしっかり写っていたのは、最後に撮られた1枚だけだったらしい。



当初、「撮影失敗」の速報が流れたのだが、はやぶさが大気圏で焼失し、機体を失ったか少なくとも機能を失った――その後になってから、上記の写真、「最後に撮影された写真」のデータが、地上管制センターに届いたのだそう。

伝送データの後半が途切れているのは、恐らくそこではやぶさが力尽きた、ということだろう。*6

地球の映像にゴーストが掛かっているのは、はやぶさの涙だ。
機体消失後に映像が届いたのは、はやぶさの魂だ。
僕は怪談屋だから、そう言っても許されると思う。





2010/6/14 0:10

カプセルが捜索中のヘリから目視確認された模様。

2010/6/14 2:00

6/14午後、カプセルの温度が下がってから回収される見込み。




6/14未明、はやぶさが消えて3時間。
東京は、雨です。

*1:初めては彗星から帰還したスターダスト計画

*2:ここで比較して引き合いに出す話ではないのだが、韓国のKSLV-1羅老2が打ち上げ失敗したのも同じ6/11。日本のロケットの場合、はやぶさを打ち上げたM-Vロケットは純国産固体燃料ロケット。H2Bを始めとする液体燃料ロケットはアメリカの技術を輸入することで進められ、現在は技術的にはほぼ国産化できている。韓国はまだ一段目がロシアの全量提供で、自国技術は二段目以降、前回、今回ともにその自国技術の二段目、フェアリングの不具合で失敗している。日本ができて中国ができて北朝鮮も一応飛ばしている、という周辺国の技術的進展に対する焦りもあるのだろうけど、こればかりはプライドと焦りだけではどうにもならないものなのかもしれない。ロケットは技術の集大成であり、システムエンジニアリングの賜物であるのだなあ、と。ちなみにシステム・エンジニアリングという概念の提唱者は、日本のロケット開発の父であり、今回はやぶさが目指した小惑星イトカワ」の名前の元にもなった糸川英夫博士。

*3:だったかな

*4:ウラシマ効果による。

*5:ほしのこえ」しか知らない人はピンとこないかもしれないけど、かつてそういうOVAがあったんですよ。20年くらい前に。

*6:2004年地球スイングバイのときに撮影されたデータを見る限り、本来のアングルの2/3程度しか送られてきていない。そこに地球を捉えたのは奇跡か、そうでなければ執念だ。