電子書籍の【大きさ】

修羅場はまだ抜けてないけど*1、先週到着した自炊マシンScanSnap S1500の設置場所を真剣に検討しないと、本気でクローゼットから出てこなくなる危険性が(ry
何分にも万夜という機器の天敵もいるので、ぬこが入り込まない場所、不使用時定置方法を考えないといかん気もする。
というわけで、ここ数年ほど書類と書類と書類をハヤニエしてきた書架の一角を整理することとする。
一〜二冊試すくらいならカッターでも足りるんだろうけど、量をこなすのであればやはり裁断機は必要になるんだろうか。専用裁断機は高いorz


そしてもっとも重要なのはPDF化した後のデータの格納&保存場所ではないか、とかそういう。
外付けHDDは現在2機。うち1機は修理中orz
既存1機についてもあまり余裕はないので、ぼちぼちもう1機入れるべきか、とかそういう。
HDD←→オンラインストレージで相互保存するとして、媒体にも焼くべきか、とか。CD-Rに焼くとして700MB。DVD-Rに焼くとして4.7GB。
では、1冊の分量はどのくらいになるんだろうかー、とか。


「超」怖い話、恐怖箱、「弩」怖い話、「極」怖い話など竹書房恐怖文庫に納品されている、僕が拘わっている文庫本の場合、本文に写真・イラストなどの画稿が一切入らないとして、224頁*2分で1.7MB〜1.9MB前後。多めに見積もって、224頁の文庫1冊で2MB以内。
1GB=1024MBとして、1GBに512冊入る。
700MBのCD-Rに焼いた場合、CD-R一枚につき、350冊。
4.7GBのDVD-Rに焼いた場合、2406冊。
25GBのBD-Rに焼いた場合、12800冊。
50GBのBD-Rなら、25600冊……。
……文庫を2万冊強っていうのは常識では考えにくい(^^;)
そんなに読めるのか? というのがでかい。
例えば毎日2冊文庫を読む人がいたとして、年間730冊。
25600冊なら35年分。
文庫1冊の厚みが2cmとして、厚みだけで考えると51200cm=512メートル。差し渡し90cm×7段の本棚にしまうとして、本棚1竿で630cm分。前後にきっつきっつに詰めたとして倍の1260cm分。90cm×7段の本棚だと40竿分……ってどこの図書館だよwwwwww
その図書館を25GBのBD-R一枚に収められるのなら凄い話だけど、実際にはそこまで本を個人所有している人は国内でも数えるほどしかいないだろうので、一般的な事例にはなりにくいorz


逆に、個人所有している本棚の数から逆算してみる。
うちの場合で言うと、90cm×7段の本棚が、仕事部屋だけで4竿。収まり切らなくなって壁に積み上げてある本と床にブチ撒かれている*3本、出窓を本棚代わりに並べてる本が1竿分、足りなくなってリビングに買い足したのが1竿分……合計でざっと6竿の本棚がある。*4
1竿あたり630cm分/315冊の本が入るので、6竿で1890冊。
4.7GBのDVD-Rに1枚で全部収まりきる分量、ということになる。
所蔵本が全部文庫で、そして全部自分が作った=自分がマスターデータを持っている本なら。
さすがに自分が作った本だけで1890冊とかありえないのでwww
今までに自分がDTPまでやって作った本の合計は、恐らく60冊前後くらい。DTPはやってないけどデータは全部手元にある*5ものを合わせると、80冊前後くらい? これに雑誌の仕事……はどのくらいあるかちょっとわからないのでパス*6としても、やっぱり過去の仕事の分だけならCD-R一枚に全部収まる。
まあ、仕事のデータに関してはPDFだけでなくInDesignのマスターデータ、作業前のオリジナルテキストデータ、台割なども保存しなければならないので単純にPDFのサイズだけではどうこう言えないのだが、電子書籍としてのみ扱ったらそんなもん。


ただしあくまでこれは「文庫本の業務用データからPDFを起こした場合」の試算。
その意味で、将来、「公式自炊」というか、「正規品の本の原盤から起こした公式電子書籍」が出るとした場合の分量の目安のひとつにはなるかもしれない。
文庫本を自分でバラして自炊した場合のデータサイズは、まだこれから試してみないとわからない。


紙に印刷されて製本された本を自炊する場合、OCRで吸い出して校正……ということを、個々でやるのは現実的ではない。
となると、JPEGで吸い出してPDFにまとめて、またはJPEGで吸い出してZIPで固めて、というのが現実的な「自炊本」の形になると思われる。
文庫本をスキャンしてJPEGにした場合、全部グレースケールにするか、もしくは二値化するか*7、そうでなければ取り込みサイズを小さくしてファイルサイズを小さくしないと、文庫本でもデータサイズは大きくなる気がする。
OCRで取り込んで「テキストデータ」としても扱うならともかく、スキャンして画像データとして扱うなら、文字しかないという文庫本のアドバンテージは相殺されてしまうような……*8


僕は文字のみの文庫本を作ることが多いけど、実際に本好きが所有する本の多くは、というか「本を買って所有する人が好む本」は、昨今では、

これが上位御三家で、昔ながらの

  • ハードカバー単行本
  • 文学文庫本
  • 写真集

というのはそんなには多くないんじゃあ……と、ブックオフの棚の分布を見ているとそう思えてくる。
中高年で読書をする人は文庫・新書の消費が多いのでは、という機がする一方、文庫を「娯楽として読み捨てる人」は、買った本をあまり手元にため込まないというか……。
ため込む人は逆に本を裁断してデータ化には抵抗大きそうだし。

逆に、「雑誌で買ってコミックを買わない人」というのが、案外電子書籍/自炊の主役になるのかもしれない。「続きは気になるけど所有するほどじゃない」みたいな。これまでだったらときどき漫喫に行って並行して追ってるものをまとめ読みにして帰ってくる、というような層。
彼らがそれぞれに自炊をし始めたら単行本が売れなくなるwのだが、一方で「雑誌は読むけどスクラップするわけではない」「別に連載読んでるんだからコミックまで買わなくてもいいじゃない」という人は、自分で本を刻んでバラして吸い出して、という手間を掛けないだろうという気もする。図書館、及びそれに相当する漫喫に行けばいつでも読めるのだからして。


連載でのみ読んでいる人がまとめ読み(一気読み)するという需要を掘り起こすのなら、クラウド的な低価格の漫画図書館、というところに商機が見えてくる感じ。先行しているものとしてはYahoo!コミックやパピレスのRentaなどがそれに相当するかも。


大脱線したので、電子書籍の大きさの話に戻ってみる。


僕がこれまでに手がけた本で、もっともコミック占有率が多かったのは、うえやま洋介犬氏×西浦和也氏のコラボ怪談本「妖幽戯画」である。

妖幽戯画
http://amzn.to/cVQlyO

224頁の本のうち、テキスト部分がおよそ80頁あまり。残り、本全体のおよそ2/3がコミック原稿(JPEG)と写真から起こした画像など。
これで、納品時のデータサイズは274MBあった。この場合の画像類は、350dpi相当でスキャンされたか、作成されたもの。
文庫本2MBとした場合、単純に137冊分相当。でけえ。


1GB=1024MBとして、1GBに3.7冊入る。
700MBのCD-Rに焼いた場合、CD-R一枚につき、2.5冊。
4.7GBのDVD-Rに焼いた場合、17.4冊。
25GBのBD-Rに焼いた場合、92冊。
50GBのBD-Rなら、185冊……。


……俄然、入らないorz
びっくりするほど入らない。
TBクラスの外付けHDDに収納するなら何ら問題はない。が、オンラインストレージに外付けHDDと同じ分量を求めたら、結構な維持費が掛かる。
容量無制限のオンラインストレージは、恒久的には預かってくれない。
無料、有料の長期間オンラインストレージでも要領としては10GBくらいが上限のようだ。

オンラインストレージ比較【価格.com
http://kakaku.com/bb/storage/list.asp?plan=3

10GBだと、妖幽戯画なら37冊までしか入らないorz
もっと出せばもっと上はあるんだろうけど、データ化してランニングコストが嵩むんじゃ意味がない。
しかし保険は欲しい、となると結構難しい。
コミックの場合、例えば「こち亀」だとか、「パタリロ」だとか、「クッキングパパ」だとか、「美味しんぼ」だとか、100巻越えの狂気の長編シリーズはともかくとしても、昨今では30〜50巻を越える長期連載作品は決して珍しくない。ワンピースとか。
となると、オンラインストレージでは自炊したコミックが全部は収まりきらない可能性がある。


まあ、これまた「業務用データ*9をそのまま入れるとしたら?」という前提なので、72dpiくらいにするとか、表示サイズを小さくするとか、この際画質は問わないとか、そこまで譲ればファイルサイズは小さくなるのだろうと思う。
「当面はiPadiPhoneだから別にサイズは小さくたって問題ないよ!」
という人もいるんだろうけど、将来、もっとストレージが安く大きく表示画質が高精度なビュアーが出たら? ディスク1枚で1TB、一枚の単価は100円……なんてのが出たら? というかほぼ間違いなくいずれは出ると思う*10
そうなったときに、自炊して原本はない、しかし手元にあるのは劣化データのみだ……ということになったら、とか。


その頃にはきっと、350dpi以上に細かい精度で取り込んだものが公式電子書籍として売られているか、いつでもクラウド上の図書館から借り出せるかできるようになってるんじゃないかとは思うんで、今将来を心配するのは取り越し苦労なんだけどw、【俺だけの一冊を手元に所有していたい】という欲の強い人=本をお金を出して購入し手元に独占したい人は、そのへんいろいろジレンマを抱えそうな気がする。ものすごく。


春期の深夜アニメでR.O.Dの再放送をやってた。
「本を独占して手元に置きたい心理」
というのと、電子書籍を重ねて考えるためのヒントとしても非常におもしろかった。




さて。
ScanSnapを置く為の掃除を……。

*1:抜ける日が来るかどうかも謎だけど

*2:見開き2頁表示ではなく、1頁ずつの表示として

*3:ぬこが倒したり自分で躓いたり

*4:事務所にも相当量あるけど、とりあえず別の機会に考えるwww

*5:元原稿を紛失していないか、いつでも自作PDFがマスター原稿から作れるもの

*6:本棚1.5竿くらいは雑誌仕事の保存用で潰れているorz

*7:二値化したらファイルサイズは格段に小さくなるだろうけど、よほど底本の状態がよいスキャンでないと逆に読めなくなる可能性が高い気もする

*8:それでもコミック原稿よりはずっと小さいだろうとは予想するけど……

*9:350dpiです

*10:今までもそうなってきたし。20年前の自分に「パソコンのメモリは16GBくらい」っていったらきっと、「16KBの間違いじゃなくて?」と言われるか、鼻で笑われて信用されてない」