演出による錯覚〜NHKの支持率グラフ編

参院選のまとめは後日。
今、いっぱいいっぱい*1


で、選挙特番中に見かけたNHKによる「鳩山内閣菅内閣の支持率の変遷」のグラフ。

「5月まで長期下落を続けた鳩山内閣の支持率は、菅内閣にタッチしたことで劇的にV字回復をした。しかし、消費税増税発言などもあって選挙中盤からゆるやかに下落した。これが参院選の敗因」
と、このグラフが説明したいのはそんなところだろうと思う。
しかし、菅内閣の支持率下落は消費税増税発言の有無に拘わらず予見できた話だった。V字回復後の最初の支持率調査で政権交代直後の鳩山内閣支持率に届いていないこと、その後は「失言しないように、初期支持率を維持する」という戦術を採ったことで、支持率が向上するような手を何一つ打っていないこと。
就任後の政権が下落を始めた支持率を回復するというのは非常に稀有で、近年では小泉政権の一時期、及び麻生政権の一時期でしか記憶に残っていない。
ましてや、「何もしないで上昇」するのは就任直後だけで、後はどれだけ早く下落するか、という時間との競争だったことは最初から見えていたことだ。

で、組閣直後の60%台が、たった二カ月で40%台に、ということをこのグラフは物語りたいわけだ。
鳩山内閣の2009年9月から2010年1月まで、及び2010年1月から2010年5月までのグラフの間隔は概ね等間隔で、鳩山時代の支持率低下比率は数値とグラフの相関関係は正しいと言える。
しかし、その後に続く菅内閣の支持率低下比率はよく見るとなんかおかしい。
2009年9月から2010年5月までの鳩山政権全期間(のべ8カ月)と、2010年5月から7月までの菅政権全期間(のべ2カ月)の期間比率(Y軸)が同じというか、2カ月分を8カ月分と同じ幅で扱うのはおかしい。


ああ、そうか。
NHKのグラフ作った人が疲れていて間違えたんだね!(棒

というわけで、菅内閣の2カ月分を鳩山内閣の8カ月分と同比率になるようにY軸の幅を直したNHK支持率調査補正版を作ってみた。

元のNHKグラフだと菅内閣の支持率低下も鳩山内閣同様の「ゆるやかな」もののように見えてしまうので、テレビでパッとグラフだけ見たら「そんなに急激な支持率低下ではない」ように思わされてしまう。
が、Y軸を補正した本来の低下率を見ると、「V字回復、Λ下落」ということがわかる。
喋らせれば失言するから、失言させないように国会も延長させない、ぶらさがりも廃止、そうはいっても選挙演説をさせないわけにいかないから、しぶしぶテレビ討論と街頭演説をさせてみたら、数少ない露出機会ですらこのていたらく。
元々「チャンスをピンチに変えるブーメラン男」という異名を持つ菅直人にとって、これはむしろ本領発揮と言えないこともないw
参院一人区で小泉進次郎が応援した候補の勝率は14勝3敗、菅直人が応援した候補の勝率は1勝14敗。一年生議員にすら……(つД`)


ともあれこれは「グラフの数値では嘘を付かず、しかし演出で誤解させる」という洗脳技術のひとつであるわけで、民放各局の報道番組がしばしば用いていることが知られていたが、ついにNHKもこの効果的な(そして足が付きやすい)グラフ演出方法を採用し始めた、ということだろうか。


同様の「恣意的な印象すり込み」というのは、絶えず何らかのカタチで行われているものかもしれない。例えば、
「そんなに大したことはない」
「我々が知らないだけで事態は深刻」
「あの人は結構腹黒いように見せかけているだけで、実は陽気で優しく真剣で有能」
「あの人は陽気で優しく真剣で有能に見せかけているだけで、実は結構腹黒い」
「黒い服を着ると痩せて見える」
「AZUKIさんの腹が出ているように見えるのは髪が緑だからそう見えるだけの目の錯覚」
などなど、我々は絶えず印象報道や目の錯覚を用いた恣意的扇動に騙されようとしているのかもしれないッ!





……選挙期間中にひっそり出回っていた「下り最速伝説」ポスターwなどについて。選挙終わったからblogにも張るw

まず、オリジナル版。


そして、民主党版。


演出で誤解させる洗脳技術とパロディというのは、ともに「恣意的な悪意w」が存在する点は共通する。が、前者は「無知に付け込み騙そうとする」という詐欺師的悪意で、後者は「理解している人間の笑いを誘う」という諧謔的悪意。
知らないまま怒らされるのと、わかっていて悪のりするのと、我々は今どちら側に立ってるんでしょうね?

*1:今年に入っていっぱいいっぱいじゃなかった日ってないな……orz