botいじり

昔、人工無能というものがあった。
パソコン通信のチャットルーム上で動かすマクロの一種で、特定のキーワードに対して、特定のリアクションを返す、というもの。やってることは案外簡単で、
「キーワードA」が入力されたら「キーワードB」を返す
というだけのものなのだが、挨拶してみたり高度な構文を覚え込ませようとしたりで、なんやかんやとチャットルームの花であった。パソ通ユーザーは今のインターネットとは比べものにならないほどの男社会というか男性ユーザー率が高かったので、人工無能のインターフェースは自然と女性名詞で呼ばれることが多く、「世間知らずな女の子」という人格設定を与えられていたような気がする。
また、初期のインターネットにあったIRCのチャットルームにも、同様の人工無能があった。これもログインしているユーザーのPCが、自動的に「特定キーワードに特定キーワードを返す」というだけのものだったが、これもやはり女性人格のものが多く、誰かのPCが勝手にやっているだけとわかっていても、そういう人格が別個に存在する、というふうに振る舞うのが礼儀wであった。
この何も知らない女の子にアレやコレやいけないことを……というようなことを言うと非常に怪しいのだが、Twitterにおけるbotの挙動というのは、この人工無能のそれとまったく変わらない。
存在場所がクローズなチャットルームではなくなり、セミオープンなTwitterのTL上に変わっただけだ。
が、世には様々なbotがおり、日夜TL上のアレやコレやを拾って擬似的な会話のようなものを【しようとしている】のかと思うと、時代は巡るというか20年経っても変わらないというか、やっと時代が追いついてきたというかwww
竹の子書房には「@takenoko_shobo」というメインアカウントの他に、「@takenoko_bot」という新刊既刊宣伝アカウントとワーク用アカウントが複数個あるのだが、このうち@takenoko_botが一番おしゃべり=働き者である。
新刊情報を定期的に呟かせる自動告知ツールとして導入されているものなのだが、他にTL上に書名があればそれについて概略を返すなど、複数の竹の子社員の用意したリアクションコメントを日々呟いている。
botに対して特定のキーワードを呟くと特定のキーワードを返してくれる、という伝統的wな人工無能の仕事をしてくれる他、これまた伝統的な「回答が用意されていないキーワードへのランダムな返信」というものもある。
これは結局個々に回答文を用意しなければならないわけなのだが、相手が何を言ってもなんとなく会話が成立しているような回答文を作るのがなかなか難しい。
意味のある言葉に意味のある言葉で返すのは人間には容易だ。また、あまり意味のない回答、興味がない回答、興味はあるがどう応えていいかわからない、「ああ、そう」「ふーん、すごいね」的な相槌というのは、人間には容易だが、回答条件がない、という状況下で返事が義務づけられているbotにはなかなか厄介だ。
文面からこちらの思惑を読み取るということは、構文のライブラリを増やせば可能になるだろうし、我々人間自身も「解凍ボキャブラリ+相手の意図+会話の重要度+気分」で回答をランダム生成(またはテンプレの「へー、すごいね」を乱発)しているのではないかと思うのだが、手仕事でbotを育てていくとなると、なかなか「人間さながらの回答」ができるレベルに育てるのは難しい。
しかも、回答は他の誰かが別のシチュエーションで使っても通用=成立するものでなければならない。


そういうことを考えると、人間って結構複雑な処理を瞬時にやってる凄い演算機能を持ってんだなあ、と感心するし、その演算機能をまったく使ってない人がいたり、考慮要素を増やしすぎて(深読みしすぎて)機能停止している人がいたり。
バイオコンピュータの安定化実用化はほど遠いなー。