久々の小泉純一郎講演覚え書き、とか。

新聞は後々まで参照できるアーカイブを残さないので、以下何年か後の自分のために覚え書き。

首相になり分かった日米同盟の重要さ 小泉氏が「政権交代してよかった」

 自民党小泉純一郎元首相が4日、横浜市の慶応大で開かれた国際安全保障学会年次大会で講演し、「鳩山由紀夫氏も、菅直人氏も首相になり、日米同盟がいかに重要か分かった。マスコミも『対米一辺倒』と批判しない。これだけでも政権交代してよかった」などと語った。詳細は以下の通り。

【講演の経緯】

 私は地元が横須賀で防衛大学校がある。その校長が(国際安保学会会長の)西原正先生で、首相の時も指導、助言を頂いた。私は当選から引退まで防衛大の卒業式は欠かさなかった。

政権交代

 昨年の政権交代は良かった。約50年近く政府といえば自民党。国民も飽きる。評論家もメディアも自民党を批判すればよかった。国民も最近は、与党になった民主党に対し、政権の座にある難しさを感じているのではないか。

 私は首相の時、日米関係がよければよいほど中国、韓国など世界各国と良い関係を築けると言った。評論家やメディア、野党から「小泉は対米一辺倒だ」と批判された。

 今の民主党政権はどうか? 鳩山由紀夫氏も、菅直人氏も首相になり、日米同盟がいかに重要か分かった。マスコミも菅政権、鳩山政権を「対米一辺倒」と批判しない。これだけでも政権交代してよかった。

【日米中正三角形論】

 尖閣諸島の問題も悪いことばかりではない。民主党が政権を取った当初「日米中正三角形論」が自民党の一部や民主党有識者から出ていた。今回の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、いかにおかしいか分かってきただろう。ようやく目覚めた。とんでもないということが分かってきた。

日中関係

 日中関係は大事だ。私は日中友好論者だ。経済を考えれば、これから日中関係は極めて重要だ。だが、一国の関係は経済だけではない。日本の平和と独立を守るために米国に代わる国はない。

【日中首脳会談】

 2004(平成16)年の11月、チリでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)が開かれた際、中国の胡錦涛国家主席との会談が決まらなかった。外務省の担当者が「中国が『来年靖国神社を参拝しなければ会談する』と言っている」と言う。
「じゃあ、小泉は来年、必ず靖国神社に参拝すると言ってます。会談をしたくなかったら、しなくて結構です」と…。

 すると中国は「会談前と会談後に『靖国神社参拝する』と言わなければ会談する」という。だから私は記者に聞かれて「適切に判断する」と言った。中国は拒否しないでOKしてきた。私の方がびっくりした。

 本当に首脳会談をしないと言ってきたのは、2005(17)年に首相退任を明言してからだ。

【日米同盟】

 「米国は日本を守ってくれない」という人がいる。だが、重要なのは、日本は本当に米国の同盟国として信頼される行動を取っているか、だ。日本自身が真剣に考えなければいけない時期だ。*

【ピンチをチャンスに】

 日本はピンチをチャンスに変える能力に優れた民族だ。石油危機から学び、石油備蓄、省エネ技術、代替エネルギー開発に取り組んだ。最近、中国がレアアースの輸出制限を言っているが、日本は家電ゴミから抽出する技術を研究している。官民一体で続けていくべきだ。
(以上)


(出典)
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101205/stt1012050015000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101205/stt1012050015000-n2.htm

上記赤字部分は引用者による。


最近読んだ、羽海野チカの将棋漫画「3月のライオン5巻3巻にも、よく似たニュアンスのセリフが出てくる。
「おまえが誰かに頼らなければ、誰もおまえを頼れない」
とかみたいな。
こちらの意図するところは、「一人で頑張ろうとするな、時には誰かに甘えろ」という意味と思う。お前が誰かを助けたい、頼られたいと思っても、お前が誰かに頼らない限り、誰もお前を頼りにすることができないんだ」という。前担任の先生、ほんとにいいこという。5巻のセリフの中では抜きんでて好き。

で、小泉元首相の指摘は「いざというときアメリカは助けてくれない」という愚痴*1に対して、「ならば聞くが、日本は普段からアメリカを助けているか?」という問いとなっている。

日米安全保障条約というのは、簡単に言うとこう。
「日本がピンチのときはアメリカが助けに来る。しかし、アメリカがピンチでも日本は助けに行かなくてよい。その代わり、アメリカが日本のピンチのために頑張るときに備えて、日本は最大限その手助けをする」
二次大戦後、日本は軍事力を放棄したが、そのまま無防備国にしておくと増大するソ連・中国などの共産勢力の軍事力に飲まれて共産化してしまう恐れがあった。そのため、一度は日本を武装解除したアメリカは、建前として日本に攻性のための軍事力を持たさないことの保障のために米軍がオフェンスに立つことを念頭に置いた片務的条約*2を結んだ。
とはいえ、アメリカの結ぶ安全保障条約というのは、「自分自身を守る明確な意志と努力の痕跡がある相手」にその資格がある、という考えに基づいている。これは極めて当たり前の話で、誰も死にたがりを引き留める義務など持ってはいない。
国レベルで交わされる安全保障条約というのは、「国としての自立・独立・自決権を維持していくために、生き残る明確な意志を持つ」ということを前提に交わされる。GHQ管理下で米軍の下書きによって得た日本国憲法は、「国際紛争の解決手段としての軍備を放棄する」となっている。これがよく言われる9条というアレなのだが、当初米軍は「日本が自主独立を回復したら、いくらなんでもこの不可思議な制約のある憲法は真っ先に修正するだろう」と思っていたらしい。
ところが、自主独立を回復した後も「法の縛り」ということで日本国憲法は改正されないまま維持されてきた。
現状、法令を変更する手段がない以上*3、今後もこれが維持されるのは、日本人自身の決断の結果なので仕方がないとして……。
その制約の下、維持されている日米安保条約は、今も「日本がピンチのときにアメリカに守って貰う(アメリカはオフェンスを担当し、敵の攻撃力を撃破し、敵の策源地*4を叩く)」というものとして在り続けている。


ではそのアメリカの責務と交換に、日本の防衛のための米軍に協力するはずの日本は、果たして債務を果たしているだろうか?
今、政権与党である民主党に支持を与えているのは所謂団塊世代学生運動世代、学生運動から戦後の労働運動を支えてきた世代で、基本は「反権力*5」「大きな政府*6」その建前としての「反戦平和」「安保反対」を拠り所にしているのだが、この世代の人達に「なぜ日米安保に反対していたのか?」を訊ねると、恐らく10人のうち8〜9人くらいは明確な説明ができないか、意味を知らないままお祭り騒ぎを楽しんでいた、と答えるのではないか。*7


或いは「当時は共産化の可能性があったから日米安保に反対したのは間違いだったのかもしれないが、今は冷戦が終わりソ連も解体されたのだから今更米軍による庇護は必要ないのではないか」という反論も出てくるかもしれない。10年前ならそれもアリだったかもしれないけど、ロシアは資源大国として力を付け再軍備を再開しつつ北方領土の自国領土化をより強く宣言。中国は西太平洋への出口を求めて尖閣諸島の自国領土化を宣言しつつ、日本の南西諸島への進出*8、空母取得、海軍近代化などを続けているわけで、実は冷戦時代よりも緊張度は増している。


戦争を知っている世代もその多くが鬼籍に入り、敗戦後に生まれた「威勢の良い世代*9」が主導的年齢にあることを考えると、なんというか日比谷事件や満州事変や真珠湾攻撃成功や……そういう報を受けてやたら強気になっていた無邪気な人々と同じ道を、もう一度進むことになるのかもしれんなあ、という気がしてくる。


危機に及んで取る打開策は、
「戦争をするくらいならいっそ潔く自滅しましょう」か、
「こうなったら一か八か戦争をしましょう」
のどちらかで、大まかにわけると潔く自滅派=左派、一か八か戦争派=右派という線引きがなされがちではある。
が、この「潔く自滅」というのは余裕があるうちの世迷い言で、余裕がなくなってくるか、もしくは自存意識がより切羽詰まってきたら、大多数は「一か八か戦争」に舵を切る。割と簡単に、「それを正義」と熱狂するわけで、内政に行き詰まったら外に敵を作って矛先を変えるという古典的な政治テクニックは、21世紀に至っても活用されるのではないか。中国や韓国、北朝鮮が日本を仮想敵として国内をまとめるように、反戦平和主義者がなぜかいつもアメリカを仮想的に掲げるように*10、いざとなったら割と簡単に「外の敵が悪い」に飛びつく左派も多いんじゃないかなあ、という気がする。


平和は戦争と戦争の合間の息抜きだという。
今回の平和はたまたま65年続いているが、ぼちぼち賞味期限は近い。
たぶん、次の戦争は右派とかネトウヨとかが始めるんじゃなくて、敵を外に求めていきなり鞍替えしてくる元左派が声高に言い始めるんじゃないかな、という気もする。
または、「持つ者と持たざる者」という対立軸を考えると、持つ者は失うのが嫌だから現状維持を望み、持たざる者は失うものなどないから仕切り直しか状況打破を望む。高度成長期とバブルの貯金がある高齢者は現状維持を望み、貯蓄や増収が見込めない現役世代は現状打破を望む。
そう考えると、現状維持が一番と平和を唱える【保守主義者】はかつての学生運動世代の左派で、「いっそ、一か八か」と言い始めるのが現役世代の右派、とかいうこともないとは言えない。


高齢者から現役世代への所得移転は民主党政権になっても全然進んでない*11上に、いずれ移民の流入が進んで現役世代の所得増がますます見込めないということになってくると、最も貧しい現役世代が「一か八か」を言いつのるようになる、かもしれない。


誰かに助けて貰いたかったら、誰かを助けないと。
誰かを助けないと、誰にも助けて貰えない。
誰かに頼られたかったら、誰かを頼らないと。
誰かに頼らないと、誰も頼ってくれない。


よく似たニュアンスのフレーズから、いろいろ膨らんだ日曜の午後。

*1:むしろ甘え

*2:普通の条約というのは二国間が相互に対等な義務を負う対等な条約であって、特に日米安保条約のように「アメリカは日本を守るが、日本はアメリカを守らない」という片務的=片方だけが得をする軍事同盟というのは、あまり多くない。

*3:2007年参院選前までの安倍政権が、唯一のチャンスだった

*4:敵の基地

*5:正確には反自民、反資本主義

*6:個人の能力差に限らず、政府が個人の待遇を一律に保障する。共産主義/社会主義により近い

*7:過去の経験上そうでした

*8:尖閣諸島問題と台湾問題はひとつの糸で繋がる話。どちらも獲得出来れば中国は西太平洋への出口を得ることになり、日本と中東の原油輸送航路、日本とEU/アフリカの貿易航路は中国によって封鎖が可能になる。

*9:学生運動の主体的な敵は政府だったが、政府は鎮圧のために用意したのは放水車程度だった。学生運動は、大人に甘やかされた子供の闘争に過ぎなかったが、当時の参加者は大人に一矢報いた、と信じていた。大多数の学生運動参加者はその後高度成長期を甘受し、バブル時代には管理職の地位でその好機を甘受した。いずれも批判していた政府の政策のおかげでいい目を見てきたわけで、中道左派の毛色が強い民主党にあって小沢一郎の人気が高いwのは、バブル時代を主導した=団塊世代にとってのバラ色の象徴だったからではないかと思う。

*10:そういえば、日本と領土問題及び軍事的対立を経験している中国・韓国・北朝鮮を仮想敵として、平和の敵と非難する反戦平和主義者はついぞ見たことない。

*11:どころか、現役世代の所得でリタイアしはじめた団塊世代を支える方向に舵取り中