震災後の日常の始まり〜計画節電とヤシマ作戦

未だ混乱は続く。
幸い僕は通勤生活者ではないので、電車の影響はあまり受けていないのだが、関東周辺の鉄道各線は本数を減らしていたりもしてるらしい。


電車の稼働に必要な電力というのは相当なものなのだそうで、電車本数を減らした結果、想定されていた電力需要が思っていたよりも少なく抑えることができたとかで、昨日から開始予定の輪番計画停電は「行わなくても需要を賄える」という判断になった。


現在、福島第一、第二、女川など、東北地方の原子力発電所が発電を停止している。女川は重大事故には発展しなかったようなのでいずれ復帰するだろうが、これは東北電力に配電している。
関東地方に配電しているのは、福島第一、第二原発福島県にあるのに東京電力の管轄になっているのはそのためだ。
新潟の柏崎原発も関東地方に送電を行っている。関東七都道府県とされる地域には、人口にして3000万人が生活している。日本人の3〜4割近くが関東にいるわけだ。


福島第一、第二、女川の停止により、日本の電力需要の2〜3割が供給できない状態が起きており、しかもこれはブレーカーのスイッチを入れればすぐにでも復旧する、という性質のものではない。
電力の消費量(需要)がこれまでと変わらないのだとするなら、供給量不足で停電が起きてしまう。
しかも、その場合はいつ、どこが停電になるのかわからず、局所的な停電ではなく不安定な電力低下、という形になってしまう可能性がある。


そこで、輪番制による計画停電が行われることになった。
この計画は、電力消費量/需要は震災前と変化がないという前提に立っている。
市町村行政区域単位で丸ごと「電力消費ゼロ」の地域を作ることで、他の地域の電力供給を安定させる。
しかし、特定の場所を生け贄にし続けるわけにはいかないので、一定時間ずつ、複数の地域を順番に休ませていく。
小中学校で習った「二毛作、三毛作のあとの休耕」と同じ(原理は違いますけどもw)。


「停電するって言ってたのに嘘かよ!」
と、停電しないことを怒るw人もいるようなのだが、「最悪、または一層悪い」を想定するのが安全保障の基本思考。最悪の場合の備えとしての輪番計画停電しないで済んだ、うまくいってて不都合が起きてないんだから、そこは笑顔で喜ぶところで、怒って文句を言うとこじゃないと思うw


なぜ、計画停電が計画通りに行われなかったのかというと、当初の想定以上に電力消費が少なくて済んだ、という点にある。
これについては、ヤシマ作戦など自発的な節電運動も無関係ではない。
政府・東電の計画停電に先だって、ヤシマ作戦*1という自発的節電呼び掛けが行われ、13〜15時、17〜19時の電源オフが呼び掛けられている。


当初の計画は東京電力が給電している関東の全ての地域の、震災前の消費電力を念頭に置いているのだと思う。
前述のヤシマ作戦のような自発的節電も奏功していると思うし、大電力を消費する電車の運行本数を制限することももちろん役立っている。
個々の企業がライトアップや夜のネオンサインを消すことだって、無駄ではない。広告に掛かる電気代はそのまま電力消費量であるわけで、それらは莫大な数字に上る。


ただ、これは個人的な見解だけど、被災地はまったく電力を消費していないということがもしかしたらカウントされてなかったのかなあ、という気がしないでもない。激甚被災地の多くは送電線を含めたライフラインの多くが寸断されており、例えば集落や都市が丸ごと喪失した陸前高田のような地域では、一切電力が使われていない。
工場の多くは操業を停止しているが、これだって燃料・電力の需要を引き下げることに繋がっている。


日本は、計画停電というこれまでにほぼ経験したことがない、新習慣を今後長期に渡って受け入れて行かなければならない。


  • 計画停電が計画通りにならないのは、前提となる消費電力の正確な把握がまだできていないから。
  • 未曾有の自発的節電とその効果が持続的なものになれば、計画の精密度が上がるから、輪番停電対象地域を少なくする、などもできるようになってくる。
  • 現時点ではそうした計画編成データが把握仕切れていない上に刻々と変わっている。これについては時間が必要。東京電力も必死です。待ってやれ。
  • 計画停電が計画通りに実行されないのは、自発的節電がうまく行ってるから。喜ぶことであって怒ることじゃないのです。
  • 部分停電させながら全体停電を防ぐというのは、電力管理上は神業級の難しい管理方法で、少なくともアメリカにはできない。日本でも至難の業。「できて当たり前。何やってる!」という門外漢の怒りは、しばらく鞘に収めましょう。



ヤシマ作戦の呼び掛け効果が実際はどの程度あったのか、初日以降も継続できているのか、効果測定ができていない以上正確な効果はわからないけれども、初日の「計画停電」の計画を狂わせるw程度の効果を上げたのは、ヤシマ作戦のおかげなのだ! と胸を張れれば、長期的な節電習慣は根付くのではないかと思う。


この節電タイムに
「電気を使わないでできることをする」
「予め充電しておいたもので賄う」
「昼寝する」
を促進するってどうだろう。
例えば新習慣としての節電シエスタとか。

*1:アニメ「ヱヴァンゲリヲン」で、使徒をレーザー兵器で攻撃するに当たって、日本中を停電させて電力を持ってくる、というシーンがある。作戦名は「ヤシマ作戦」で、これにちなんでいる。