計画停電の話と小池さん

計画停電、今の所は想定需要を高めに見積もってるせいもあってか、予定していた停電をしないで済んでいる、という割と快調な滑り出し。
ただ、夏に向けて6000万kw級の給電能力が回復する見込みはないなあ、火力発電所の復活があっても、メンテなしでの全力供給をやったとしても、1000万kwばかり足りない状況は続くので、計画停電は春から初夏に掛けては休止、夏に復活、秋に休止、そしてまた冬に復活、と、夏冬の計画停電を繰り返すことになりそうな由。春秋だって、気を抜けば計画外の大停電もないとは言えず。


さて、そんな中、「賠償問題」について触れている人がいた。

昭和26年通達を突然持ち出す神経が理解できない。国策「計画停電」による損失は国が被るべき。労働者にしわ寄せは言語道断! RT @technocat1026: @koike_akira厚生労働省が「計画停電に伴う休業は賃金保障しなくていい」と #haken #koyou

http://twitter.com/#!/koike_akira/status/49454763254874112


今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故によってもたらされた損害の賠償について、国が被るべき、という主張。
原子力発電は国策だから、国が責任取れ、とまあ、そういう主張をする人は結構いるので、一意見としては理解できなくもない。
が、その後に続く「労働者にしわ寄せは言語道断」が気になったので、意見を書いた。

国が被ったって、その賠償原資は「労働者」を含めた国民の納税。 RT @koike_akira: 昭和26年通達を突然持ち出す神経が理解できない。国策「計画停電」による損失は国が被るべき。労働者にしわ寄せは言語道断! RT @technocat1026: @koike_akira

http://twitter.com/azukiglg/status/50453960561135616

常々気になってたことなんだけど、「国」というのは何なのか、と。
風土・地理的な意味での「国」のことじゃなく、この場合の用法は「政府」のことだろうと思うんだけど、政府ってのは有権者の代表であり、国=政府だけど、政府=有権者の出資した税の再配分と調整を行う機関なわけで、「国」と「労働者、有権者」を対立する別のものであるかのように論じるのって、おかしくない?
だって、労働者、有権者が自分達の利益代表として選出したのが議員=政治家で、その政治家のうちの多数意見が第一党=与党になるわけでしょうが。
国=有権者自身。議員、閣僚だって有権者の代弁者、利益代表に過ぎない。
そんで、「国が賠償の責を負う」ってことは、その賠償の原資はどこになるのかといったら、もちろん税金なんじゃないの? どこかでに使わずに取っておいてある埋蔵金とやらがある、と散々民主党は言ってたけど、政権についてみたら「修学旅行の積立金」を今すぐ必要じゃないからって取り崩しただけで、どこにも埋蔵金は見つからなかった。本当にあったら、初年度に全部使ってるよねw 「やっぱり埋蔵金はあった!」って鼻息荒く。

てことは、国が賠償の責を負う場合の賠償原資は税金。
しかも、新規の税金。これからその賠償のための税金を、結局のところ納税者=労働者が払うことになるんでない?
と思ったのだった。
そしたら、今度はこんな返答が。

「原資」は東電に出させるのが当然。 RT @reflectionT: RT @azukiglg: 国が被ったって、その賠償原資は「労働者」を含めた国民の納税。 @koike_akira: 昭和26年通達を突然持ち出す神経が理解できない。国策「計画停電」による損失は国が被るべき。

http://twitter.com/koike_akira/status/50457727964688384

原資を東京電力に出させよ、と。
これまた、原発事故の責任を東電に求める主張としてよく聞くし、気持ちはよくわかる。そうできるならそうしてほしい。
が、現実を見据えると。
仮に東京電力が持てる資産を全て差し出して賠償にお使い下さい、と言ったとしても、まるで足りないんでない? 現実問題として。
さらに、東京電力が資産を差し出して現金化しようと思っても、福島第一、第二原発の土地家屋設備一式を買い取るとこはないよね?
それ以外の発電所設備、人員を誰が(どこが)賠償原資に足るほどの金額を出して買い取ってくれるの? てか、買い取れるほどの資金力があるとこって、国内にいたっけ?
他の電力会社が東電を買い取れ、その金で賠償しろってこと?
でもそうすると、他の電力会社は東電買収費用のために、結局電気代上げるんと違う? つまりは、労働者、有権者、一般市民の電気代に跳ね返ってくるよね。他の道府県の。
電力会社以外の企業で、東電の設備を買い取れるとこってあるの?
国だろうが東京都だろうが、それを買い取って、なおかつ東電の発電事業をそこが継承してくんなかったら、東京/関東圏の給電事業は結局滞ったままで、これまで以上の経済損失が出るよ?

発電事業はただの慈善事業じゃなくて、ある程度の収益性があり、社員の給料、協力会社への報酬が支払えて設備の維持や新設に投資できるくらいの儲けが上がらないと続けていけない。
東電への賠償金請求により東電が事実上破綻した場合の、事業継承はどうすんの?
と思ったので、

東電が資産全部差し出しても足りない。現実ではないです RT @reflectionT: 今の東電には原資の目処が立たないのでは?それを当てにはできないでしょう。 RT @koike_akira: 「原資」は東電に。 @koike_akira 国策「計画停電」による損失は国が被るべき

http://twitter.com/azukiglg/status/50472966420574208

てなことを書いた。
まあ、途中に、

@yamaneko_strike 原発維持必要無し。全ての原発を停止せよ RT @reflectionT: それで足りる?社員に給料は?原発維持費もあるし。 RT @hurati 東京電力平成23年3月期第三四半期決算短信 1兆8812億円 @koike_akira @reflectionT @azukiglg

http://twitter.com/yamaneko_strike/status/50498140255698944

というような、これまた反原発脱原発の典型的近視眼意見も出てた。
これに「その通り!」と飛びついた人は、

東京電力計画停電を考える|西陣に住んでます
http://ameblo.jp/kazue-fujiwara/entry-10835236187.html

にある、給電事情というか「一日の電力の需要と供給」の項を読まれるとよいかも。
ぶっちゃけていうと、日本の電力供給は、

  1. 出力の微調整はできないけど大電力ぶんまわしの原発
  2. 必要量に応じて供給量を調整できる火力発電
  3. ピークタイムに蛇口を捻るだけで電力を生み出せる*1揚水型水力発電

の三つで調整されている。
その底辺を支えているのが原発なわけで、原発をまるっと止めてしまった場合、水力はそう簡単には増やせないので*2、火力発電を増やすしかない。が、火発はCO2の増加が懸念され、燃料費*3も嵩む。炉のメンテが要るので、回しっぱなしにはできない点は原発と同じ。
結局、簡単に「原発やめろ!」と勇ましく言い、「皆で節電すればなんとかなる!」と言ってみたところで、代替電源のアテがあるわけでもなし、と。


正論っぽいものを勇ましく言うのはきっと気分がいい。
だけど、それを実現しようと思ったら、それがなんであれコスト計算やら、費用負担やら、といったものを考えなければ立ちゆかない。
言うだけならタダだけど。


そんなわけで、「国が負担しろ!」「東電が負担しろ!」と言ってた@koike_akira 小池さんというのは、どこの小池さんだろうと思ったら、この4月の統一地方選東京都知事選に立候補している、共産党小池晃参院議員http://twitter.com/koike_akira )だった。


ふーん。
道理で。
でも、これから首長選に出馬しようって人が、「有権者代表」を「有権者自身」と切り離して論じてたらイカンのではないか、とか思った。
うーん、今回も共産党はねえな。


原発見直し、脱原発は、これから強く望まれるだろうし、それを標榜して選挙に臨む人も増えていくんだろうなあ、と思う。
脱原発して、なおかつそれ以前と同等の電力供給が維持できる、具体的かつ事業化でき政治的に実現可能な方法があるなら、是非それを支持したいと思うのだけど、「勇ましく美しい総論」に対して、「事業・政治的に実現可能な具体策・各論」が伴った人ってのは、今の所まだ一人もいない。

今後の代替電源(発電事業)について考えてみた、の思考実験にある以上の、脱原発を実際にした場合の代替電源って、主要な反原発論者からは、ホントに出てこないのな(´・ω・`)
http://togetter.com/li/112543



さてさて、一発逆転の魔法の杖を最初に見つけてくるのは誰なんだろうかな。

*1:そして夜間の余剰電力で巻き戻しができる

*2:環境保護視点と公共事業縮小のための脱ダム宣言にみんなが乗っかっちゃったから

*3:今は原油じゃなくてLNGだそうですが、タダじゃあない