近所に飲みに行くなど

先だって、久しぶりに地元の飲み屋に顔を出した。
そこに前に勤めていた店員さんのご実家が福島で、大将も行ってきたらしい。
いろいろ話を伺うなど。
「でも、皆普通に暮らしてたよ。可哀想とか上から目線で思ったらいけないよ」
など。
「だから現地で福島の酒を仕入れてきたよ。惜しいな、明日以降に届くんだよ」
しまった、近々出直してこよう。
鶏レバ刺しが絶品の店なのだが、取引のあった東北方面は操業停止になってしまっているようで、今は都城仕入れ先を変えたらしい。
「あそこも火山噴火とかあって飛行機が飛ばなかったりするんだよ。でも飛ぶ日は今までより新鮮だな。航空便は速いよ」
どこも大変だからな。皆で頑張らないと。

繁盛してる店で、ときどき入れなくて「ごめんごめん」なんてことも珍しくなかったのだけど、僕らが顔を出して後、随分長いことお客は僕らだけ。
「外で酒飲んでる場合じゃないもんな。仕方ないよ」
帰り際、他にも幾組かお客が来た。
最近は客の入りも遅いらしい。
節約して家で呑めばそりゃ安上がりなのはわかってるんだけど、ここでしか飲めない酒、ここでしか食えない肴もある。全てを自分で賄うのは非効率だし、不可能。
「この突き出しうまいねえ」
「そりゃあ、これでお金貰ってるんだもの」
お金を戴くに値するものを出すプロが作るものに素人が敵うはずないわけで、そうした仕事を僕らは分業・分担することで、互いに購いあっている。
節約して似たような飯を自分で作ることはできても、本当にうまいのはできない、となったときに、
『でも自分最優先で、残念な飯に耐え続けるべきか』
『身銭を切って、美味しい飯を作る人を生かし続けるべきか』
の二択が迫られるのかなあ、とも思う。


元々おしゃべり好きの大将なのだが、昨今の世情や客の少なさも相まってか、その晩はいつもにも増して饒舌だった。


酒は美味く肴は美味く楽しい夜であった。
また行こう。