竹野正法物語
http://tknk.wwu.jp/?p=1477 (書誌情報)
http://bit.ly/o0EFzz (PDF直接DL)
竹の子書房の創業者・竹野正法の人物と謎に迫る――。
実在しない架空の創業者について、よってたかってホラを吹いてみたら、案外面白い本になりました。
企画発案からリリースまで二週間の総力戦。285頁のPDF電子書籍。
例によって無料です。
これで本は77冊め、ウィンドウズガジェットを入れると通算78本目の竹の子書房作品。
一年で100冊を目指してたんだけど、やはり上半期は本業が忙しいのでなかなか。
それでも、平均すると月産6冊ちょっと。
多い月で13冊、少ない月で3冊くらい。
「遊びにそんなに時間使いやがって」
と言われそうだけど(^^;)、繰り返しますがこれは「ソフトウェアの習熟練習」であり、そして同時に「電子書籍のための編集・組版の速度を向上させるための訓練、及び電子書籍を仕事として作るとしたら、どの程度の規模のものを一カ月当たり一人で何冊まで可能か?」を知る為のデータ抽出実験でもある。
電子書籍の制作単価は、恐らく安い。
既存の文庫用編集済みデータから出力する場合、編集費は事実上タダ同然。
改めて電子書籍作り下ろしで取りかかった場合、編集組版の手間は紙の文庫とほとんど変わらないにも関わらず、実質的にその費用は計上されるかどうかも怪しい。
かといって、作者が書いた原稿をポンと渡すだけでは本にはならない。
「PDFファイルと電子書籍の差は何か?」
を考えた場合、そこにあるのは「整理、推敲、校正、デザイン、組版」といった編集工程の有無になるのだが、編集という工程を踏まない【玉稿】はそれがよほどのベテランの作であったとしても、本とは言えない状態であることがほとんどだ。
経験から言えば、自分で書いた原稿を自分だけで完全な推敲、校正までするのはかなり厳しい。やはり第三者の目と手と手間が入らないと厳しい。
しかし、電子書籍はそうした手間のための予算を計上しにくい側面がある。
発行部数はなく、DL数=実売数なので印税以外の制作費を計算しにくい。まだ、各社ともに共通の「慣習としての価格設定」はないし。
今後、どういう価格設定ができていくにせよ、今できる対応は「できるだけ幅拾いフォーマットに対応できる」「できるだけ短い時間(=少ない労力)で必要十分レベルの本を作る」というスキルを鍛えておくこと、ということになる。
竹の子書房の本(小説、文字主体)*1の場合、
20〜30頁→2時間
50頁→3時間
100頁→半日〜一日
150頁→2日
200頁→2〜3日
だいたいそのくらい掛かる。
大部分はこれも紙の本と同じで、組版している時間よりも「草稿を整理推敲する時間」と「校正」にほとんどの時間を取られる。それがなければ組版作業そのものは30分〜1時間掛からない。
頁数増は倍数で増えるのではなくて指数的に増えるというか……例えば三時間でできる50頁の三倍の150頁の原稿は、九時間ではできないというか。
「電子書籍は頁数のことを考えないでいい(印刷費が掛からない)から、いくらでも分厚い本が作れる」と村上龍先生が言ってた。
無理です。
編集費が出ないです。
読む方も大変つか、飽きると思う。
- 飽きない程度の長さ
- 空振りでも「失敗した」と思わないで貰える価格設定w(これが高すぎると、読者は警戒してしまって紙で有名な著者かエロしか手を出さなくなる)
- 1頁辺りの適切な分量
などなど、未解決の要素は多い。
ビュアー端末、フォーマット、ストア、そういう部分以外にも、電子書籍が抱える、そして今後浮上してくる問題はいろいろ考えられる。
竹の子書房の一年間はそういう課題点をいろいろ浮きだたせることにも役立っており、今後数年の間に問題になるだろうことが、なんとなーく見えてきた。
ビュアー、フォーマット、ストアの問題は長いものに巻かれるのを待つしかないんだけど、開発環境と編集工程のほうはどうしたもんかなあ。
とりあえず、XMDF、ePub、もしかしたらADPSへの対応を視野に入れつつ、また次の一年間を勉強と研究と練習に費やしたいな、と。
*1:竹の子電本は1頁25字×10行、商業文庫は40字×16行なので、実質的には商業誌の1/2程度