約百冊校了
仕事でもないのに全力投球しました。
まあ、仕事しないでナニやってんだ、と叱られる可能性もあるけども、日頃「原稿書き」「文庫本編集(組版)」を主にやってると、雑誌の感覚を忘れがち。元々雑誌出身、雑誌時代が長かった*1ので、染みついた雑誌の約束事を思い出しつつ、InDesign CS5.5の潜在能力を引き出してw、「お金が取れるレベルの図書目録を!」というのを目指してみた。
「竹の子書房の約百冊」は、約16カ月間に及ぶ竹の子書房の成果を目録に仕立てたものなんだけど、電子書籍に関わってみて痛感したのは、「原稿をPDF/ePubに出力するだけのものを電子書籍とは言わない」ということがまずひとつ。
原稿さえあれば誰でも電子書籍を出せる、というのを売りにしているサイトも増えてきたけど、それは単に「プリンターで紙に出力」が「WebでPDFに出力」になっただけで、それだけではやはり「書籍」ではないのだろう。
本作りというのは、デザインと校正、それらを兼ねる編集、そういうものなくしてはなり立ち得ない。
例えばさぼり記の内容を紙にプリントして、ホチキスで綴じたものを本と呼ぶかと言われたら、まあ呼ばないだろう。それは、せいぜい「出力見本」。ただの紙束であって、本じゃない。誤字多いしw
約百冊は、一応電子版も用意している。
InDesignで作ってPDFに出力したものを印刷原稿にしているので、その印刷原稿原本PDFをそのままネットに乗せれば「電子書籍」になるのかというと、んー。
入稿データは500MB越えましたお。
文庫本は普通、1ページに640字くらい入る。入るが、実際には400字分くらいしか使わない。改行があるから。
竹の子書房の電子書籍は1頁250字入る。1Tweetが140字で、だいたいこれがぴったり収まるか1行零れるかくらい。
約百冊はA5判で、もしぎっちぎちにテキストを入れると1600字くらい入る。まあ、書影が入ったりリードが入ったりQRコードが入ったりで、1000字くらい。
それがみっちり100頁。
死ぬわー。死ねるわー。
DLするほうも大変だと思うので、リリースする電子書籍版はやや低解像度(といっても見るに耐えるクオリティ)のものを予定しているけど、それでも85MBくらいある。
雑誌一冊程度の電子書籍てのは、そんくらいのサイズになるのだなあ、と。
本の校正作業では、単に誤字脱字を直すだけではない。
文法的におかしければ直す。また、文法が正しくても内容がおかしい、誤解しているものは直す。
違和感を感じるものは、違和感がなくなるまで直す。
この「違和感がないものを作る」ってのが、実は結構難しい。
文章の不備、誤字、文法・綴り間違い、書き癖みたいなもの、そういうのは内容への没入感を妨げる。何度も同じ表現が出てくれば、それが誤字でなくても文法的に正しくても、ボキャブラリの少なさや重複感を呼ぶ。それも直す。
そうやって研ぎ澄ませていくには、本当に大変な手間が掛かる。
本作りの手間の大部分は、草稿を作る作業よりもそれを違和感がないところまで研ぎ澄ます作業なのだと思う。
さらに、行頭に拗音促音があると気になる。
そのとき、僕は、わ
っと大きな声を出した。
とか、こういうのもう猛烈に気になるので、
そのとき、僕は、わっ
と大きな声を出した。
に直すし。
そのとき、僕は、わっと大きな声を出し
た。
こういうのも猛烈に気になるので、
そのとき、僕は、わっと大きな声を出
した。
せめて二字送る。
そうすると前の行で字が余ってしまうので、そこは行間を空けて調整する。昔はそれを組版職人さんが手作業でやっていたのを、今はInDesign上で指定することで解決できるが、それだって全てをソフトが自動でやってくれるわけではなくて、伸ばす場所、詰める場所をひとつひとつ指定して確認していく。
気が遠くなるほど地道。
それが本作りなわけで、出力結果が紙であろうと電子媒体であろうと、そこらへんの手間は全然変わらない。
紙束や電子データといった器の部分ではなく、その人間が関わる手作業部分こそが、「原稿を本たらしめる付加価値」なのだと思いたい。
んなわけで本作りは大変。
約百冊には、結構な人数が関わった。
ライター×2人。編集・組版×1人。デザイナー×2人(装幀+本文デザインは組版を兼ねる)。描き下ろしイラストレーター×1人。画素材提供者多数。カメラマン×1人。写真素材提供×4人。作家×11人。校正担当者はのべ20人くらい<多すぎ
ちょっとした編プロの総動員体制に近い。
好きでやりましたので、お金はもらってません。
もう一回最初からヤレと言われたら全力で拒否するw
もしくは、「金くれ」と言うと思うwww
ただ、普段文庫作りにしか使わないうちのInDesignの「本来できること、潜在能力」を相当引き出した気がするし、その意味では非常に勉強になったなあ、と。独力で本を作る、本を作るのに最低限必要なスキルとリソースは何で、逆にどこまでつぎ込めて、どこまでやらなくてもいいことwをやるだけのコストを掛けられるか、られないか。
そういうことの見極めにはなった。得たものは大きい。
自主トレによってスキルアップを実感できたという意味では楽しくもあった。
やっぱ、本作るのは楽しい。
せっかくなのでチラシも作ってみた。
こんなにたくさん作ってきたんだなあ(^^;)
紙の図書目録(この前作った社判による検印入り)は200部限定なので、取り置き予約・通販予約の方はこちらから。
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*1:攻略本もやってましたが