偽カラスミ

世界三大珍味といったら、キャビア、トリュフ、フォアグラ。
日本三大珍味といったら、カラスミコノワタ、塩ウニ。
特にカラスミ。唐墨(・∀・)ウマー。でもタカー( Д )
日本意地汚い学の権威であらせられる味覚人飛行物体・小泉武夫博士によると、カラスミはボラの卵さえ手に入れば、いたく簡単に作れるものらしい。
ボラの卵の上下を縛って塩水に漬け、塩抜きして水で洗って干すだけ。後は酒を飲んで待っていればよい、とゆー。
好みの味とかこだわりだしたらもっといろいろ手も掛かるんだろうし、そもそもボラなんか簡単に手には入らねーよ、という気もしないでもないのだが、話を聞くだに後悔することがひとつある。


ボラ。
子供時代、ボラはナンボでもいた。
海沿いの子だった僕等の幼少時の遊びといえば、やっぱり釣りであったわけなのだが、駿河湾狩野川の河口付近では結構いろいろなものが釣れた。
頑張ればスズキ。
手こぎボートを出せばキス。僕の人生初釣果はキスでした。
堤防釣りでもワタリガニとかカワハギとか。
しかし河口=港湾で、もっともよく釣れる魚といえばボラ。
正面から見ると逆三角形をしていて、大きさは25〜30cmくらい。そんなに大きくなかったのと「生臭い」という理由で、釣って帰っても全然喜ばれない。そもそもうちは魚屋だったし、「なんでボラなんておいしくない魚釣ってくるのか」と言われたりもするもんだから、釣果は持ち帰らないことがほとんどだった。
子供に限らず大人の釣り人もボラは喜ばない。釣れても「なんだボラか」と足で踏んで針を抜き、そのまま近所の野良犬や野良猫に投げてしまう。
そのころはボラがカラスミの材料なんて知らなかったから、僕等は釣り上げたボラを堤防にキャッチボールのようにたたきつけて「餌取りかよ!」と悔しがったりしていたのである。
もったいないことをした(つД`)


カラスミカラスミ……。


で。
半年ほど前だったか、近所のスーパーで「カラスミ風味食品」というのを見かけた。
ボラの卵で作ったカラスミは高いので、タラやサメの卵で似たような風味のものを作りました、という。要するにトビウオの卵に色を付けて「蟹の卵だ!」といって喜ぶ(^^;)のと同様の、「カラスミ風なんちゃって商品」である。
「ニセモノかあ……」と、そのときは看過したのだが、その後、先の小泉武夫博士による「手作りカラスミ」の話を読んで、脳内に「カラスミカラスミカラスミ……」という文字が刻み込まれてしまった。
でも、本物のカラスミはめちゃくちゃ高い。100gで2000〜3000円はザラ。
海のダイヤと言われる生しらすだって、地元で喰えば100g300円しないってのに。オーストラリア産牛肉だって安いとこなら100gで128円くらいだってのに。いや、比較対象がアレだが、ともかく本物のカラスミは高い。ベルーガキャビアは35gで5000円だったりするので、それに比べればとか、川根茶は100g5000円なんてザラだろ!気にすんな!……と自分を慰めてみたりするのだが、それはそれとしてやっぱカラスミ喰いたいなあ、という思いが日増しに強くなる。
そうだ。あの偽カラスミを……と思ったら、時期が終わったのかもう並んでなかった。orz



昨夜、気分転換に深夜営業のスーパー*1をうろついていたら、あった。
株式会社スギヨ*2というところが出している「能登からせんじゅ」という商品らしい。
「本物には及ばないが、カラスミを使ったイタリアンパスタソース*3に使うと、本物と遜色ない味が出ると、パスタ好きの人々の間では有名な商品、とのこと。
ほーほーほー。
ということで即買い。
早速喰おうかと思ったのだが、「酒も飲まないでつまみだけ食う」ことほどつまらんことはない。


祝杯の肴に喰うぞ、と心に決め、今は冷蔵庫の特等席の中に雄々しく飾ってある。

*1:寝静まるのが早い街なんで、空いてるところはコンビニと深夜スーパーしか……orz

*2:スギヨは石川県の水産会社で、いわゆるカニカマを発明したところらしい。

*3:ギリシャカラスミを喰う話は知っていたが、イタリアの本場にもカラスミを使ったパスタがあるらしい