今日の種と攻略法

本日の種蒔きは2本。
それはそれとして、だいぶ数が出てきたので、遺伝記の攻略法というか転がし方について覚え書き。
まずは、昨日出した樹系図を例に。

遺伝記では「必ずどれかと設定が繋がってること」というルールがあるのだが、これは

  1. 自力で上流のどれかに繋げる
  2. 他力本願的に下流のどれかに繋げてもらう

の2種類のやり方がある。
まず(1)のやり方。これは「最低一個以上、最大三個まで」と設定を共有できる、ということになっている。応募用CGIの遺伝元も最大三つまでしか書けず、最低一個は必ず書かなければならないようになっている。
樹系図で言うと、現時点では遺伝上の末端にある「細胞記憶」「墓標」「ケンジの死因」、これらはそれぞれ上流の遺伝元作品1個にのみ枝が伸びている。

  • はっぱ←細胞記憶
  • Fresh←墓標
  • 仏師←ケンジの死因

これは最小単位で条件を満たしている状態。
自身の後ろにはまだ何も続いていない上に、自分はいずれかひとつにしか枝が付いていないので、お話としては最先端とも言えるし末端とも言える。いずれにせよ、このままではあまり注目はされにくい。現時点では15作品程度*1しかないのでまだ全部追える程度だが、応募総数が増えていった後、途中から読み始めようとした場合、末端の過疎化したものは追われにくい。
また、文庫化の際に、例えば直上の作品が生き残らなかった場合、必然的に枝が切れてしまうとその下のものも繋がりが途絶えてしまうことになってしまう。


そこで、上流の遺伝元を複数にすると生き残る確率が2倍になる。
図で言えば、「天神様」は「加護」と「梅の実食えば百まで長生き」のふたつに、「キャベツのプライド」は「梅の実食えば百まで長生き」と「紅茶の美味しい喫茶店」のそれぞれに枝を振っているので、仮に「梅の実食えば百まで長生き」が没になっても、「加護」「紅茶の美味しい喫茶店」が生きていれば、途絶えていないことになる。
「用事の用事は」のように、最大三つまで枝を付けられるので、例えば人気のある作品、多くの人がぶら下がっている評価の高い……つまり生き残り率が高そうな作品複数に繋げれば、生存確率は3倍になる。


とはいえ、自発的に枝を繋げられるのは最大3つまで。
それではやはり枝が切れてしまう可能性からは逃れられない。
そこで(2)。
自作品に繋げて下流に着く作品があれば、自分の上流が途絶えても、下流のほうから生き残ることができる。
図で言えば「仏師」と「はっぱ」は、それぞれ自身は上流に1本しか枝を付けていないが、「仏師」は「ケンジの死因」「Fresh」「ある記事の齟齬」「楊枝の用事は」の4つから、「はっぱ」は「仏師」「Fresh」「細胞記憶」「紅茶の美味しい喫茶店」の4つから枝を付けられている。それだけ人気がある、または「使いやすい設定が盛り込まれた話」ということになる。
下流の枝は自分自身では伸ばせないけれども、人気がある=良いと評価された作品、設定(アイデア)が評価された作品は、それだけ多くの下流=子孫を増やした、ということになる。
遺伝記では、個々の作品への審査が行われるわけなのだが、人気のある作品*2は、必然的に下流(子孫)が多くなる、ということにもなるわけで、子孫をぞろぞろ付けた作品は上位に食い込む*3確率も高くなる。
最大自力で3つ、最低誰か一人から枝を付けられれば4つ。内容がおもしろければ、誰かに付けられる枝の数はいくらでも増える。


もちろん、自分の作品に自分で続編を書く、自作品に自分で枝を付けることも禁止事項ではないので、いっぱい書いて自分の作品で安定したコロニー群を作ったってかまわないわけだ。
自作に自信がある人は数を増やして「自分作品コロニー」を作ってもいいし、とにかく生存率を上げたいなら人気が出そうな作品に枝を付けていく、ということになる。


では、人気がある作品の金魚の糞wのようになっていればいいのかというと、それだと恐らく「人気のある作品と、似たような話」がぞろぞろ出来てくることになる。その例となっているのが「仏師」と「Fresh」。もちろんオチは違うのだが、後から出されたFreshは、テーマの依存がある上流作品とどうしても似てしまう。人気作品の設定を引用したものばかりになると、どれも似たような……というところからは逃れにくくなってしまうため、自分自身の独自性を出せなくなってしまうことも起こり得る。これでは、独自性が発揮できず目立てない。
当然ながら、本日公開の「擬態する殺意」のように、「楊枝の用事は」と設定というよりギミックやごく一部のみがそこはかとなく隣接しつつも、まったく違う話を仕上げることは可能であるわけで、このへんは「機転と想像力」が重要、ということになってくる。


その他にも遺伝記の攻略方法は幾つかあるのだけど、ここであんまり出し過ぎるよりは、気付いた人がその方法論独り占めで傑作選乗っ取りに走ってくれたほうが面白いと言えば面白い。


遺伝記に限らず、こうした品評会的な企画というのは多かれ少なかれ「商業出版物*4掲載枠を、人気作品で奪い合い」という企画であるわけなのだが、最終結果だけが最後にぽこんと発表されるだけのものに比べて、遺伝記はその途中経過を自分でどうにかするチャンスがある。
これは、チャンスの女神の前髪であるわけで、どう使うか生かすかは応募者次第ということになる。
種を書いているプロ*5の鼻を明かすものが7/15以降に出てきたら凄く嬉しい。

*1:図では13作品

*2:内容としておもしろく、さらに別作品を生み出すよう、他の作者の創作意欲を励起した作品

*3:つまり、傑作選収録に向けて生き残る

*4:遺伝記では傑作選

*5:混じってます