簡素売り……菅総理

これからはミラクル・カンが総理になるわけなのだが……。


民主党に「ブーメラン」という特性を付け加えたのはこの菅直人という政治家で、あらゆる指摘、あらゆる批判が自分にも跳ね返ってくるという芸風を持っている。まさにMr.ブーメラン。


形式上は菅首相-仙谷官房長官-枝野幹事長-岡田外相(以下留任)で、みずぽ蓮舫に変わったくらい、内閣の大部分は留任の小規模な改造内閣となる様子だが……。
就任後の最初の仕事は「普天間基地問題」。*1


普天間問題への対処

菅直人はこの数カ月間、基地問題に関してはほとんど発言してこなかったので、どちらにでも振れることはできる。前政権の「自民現行案に限りなく近い日米合意」を履行する方針も、「県外」も。
ただ、8月末までに予算審議可能な具体的な設備設計……というところまで話を進められなければ、米議会が移転予算の審議を凍結するので、事実上、基地は普天間に固定になる。辺野古移転もない、基地もなくなる、ということはあり得ない。

鳩山前首相は「最終的には自主防衛を」と言ってたけど、普天間海兵隊というのは台湾・韓国に対する斬首戦略*2に対する抑止機能でもあるわけで、そこから米軍を追い出したら、それじゃあ自衛隊が台湾・韓国への斬首戦略に海兵隊の代わりに対抗できるのかといったら、「専守防衛、海外には展開しません」が建前で、実際そうした訓練もしていない、法的権限もない自衛隊はそれはできない。
「日本は絶対に来ない」という確信があれば、張り子のトラでしかない。米軍は「やるときは本気でやる」「21世紀でも戦争を仕掛けることに躊躇がない」という実績が、対抗者にとっての恐怖と信頼と抑止力になっているわけで、沖縄に米軍基地があるというのはそれだけで「自衛隊がいる」ということ以上に重要な意味を持つ。


……というようなことを、それじゃあ8カ月間閣内浪人wだった菅直人が勉強してきていたならスゲーなと思うけど、この人は何もやってこなかった、そしてウケの良いことを言うつもりでしかないんじゃないかなあ。

赤松口蹄疫問題への対処

カイワレ喰ったときのように、宮崎で牛肉BBQ&とんかつたべて風評被害払拭とか、そういうことは絶対にやるだろうなとは思うんだけど。
それ以上のことは考えてないでしょう。

代表選の意図と今後

小沢グループの立てた候補を下し、小沢色を払拭し、体制も反小沢系でまとめた……というのをやることで、見た目としては「民主党はフレッシュに生まれ変わった!」となる。
小沢色が弱まったことで、有権者も「今度こそ」という期待を持つ。
それによって参院選は当初よりは(このままポカがなければ)民主が盛り返すかもしれない。


が、民主が参院選に勝とうと負けようと、8月末の普天間基地問題決着に目処が立たない限りは、菅政権は9月までの短期政権になるのではないか。
5月末の決着という鳩山前首相の切った期限は、「勝手に締切を作って自滅した」「もっと引き延ばせばよかった」というような話ではなくて、8月末とされる*3、米議会での移転予算審議に入るための予備期間。
鳩山政権の日米合意を動かさずに、菅政権が沖縄の説得を二カ月半で完了できるなら、なんとか8月に間に合うかもしれない。
官僚のサポートなしには難しい。
まあ、先の国会での財務相答弁でも「え、これなんて答えればいいの?」と官僚に耳打ちしてるくらいだったから、官僚回帰はするんじゃなかろかなあw 既に奥さんに「官僚と上手にやって。政治家だけでやれるはずがない」とか言われてるらしくw
厚生大臣時代、薬害エイズ問題について官僚を怒鳴り散らして資料を出させた……という武勇伝が菅直人というパフォーマンス政治家の出世のきっかけだったわけなのだが、官僚を怒鳴って言うことを聞かせるキレまくり総理になるのか、何でもかんでも「カンリョウガー」と責任転嫁する総理になるのか、現実を前にして自己否定してきた官僚依存に回帰する「小沢の傀儡がいなくなったと思ったら、官僚の傀儡総理に戻ったでござる」になるのか。


言えることは、旧小沢陣営からも、民主党にまだ夢を見ている陣営からも、自民党など野党陣営からも、全方位からつっこみを入れられる隙とか余地がある政権であるわけで、マスコミが庇ってくれているうちはともかく、そうでなくなったら全方位サンドバッグ内閣になる恐れが高い。

小沢陣営はどう動くか

  • 旧小沢陣営が、党を割るようなことを仄めかして野党(自民、たちあがれ日本みんなの党など)と連立する
  • 菅政権に参加した反小沢陣営連合軍が、結局三カ月で崩壊し、その後に「やっぱり小沢じゃなきゃだめ」という空気を作って小沢陣営が主流派に復帰


シナリオは二つ考えられるけど、党割りについては小沢一郎は過去何度もやってきたことなので、「やりかねない」。小沢グループ150人が例えば離党して新党を作ったら、それだけで与党民主党に匹敵し、野党自民党以上の規模の「最大野党」みんなの党がかすむほどの「どでかい第三極」が生まれるわけで、当然キャスティングボートを持つことになる。
そして、小沢は躊躇なく党を割る男でもある。
これまで、民主首脳はそれが怖いから小沢を腫れ物に触るように扱ってきた結果、小沢独裁体制の構築に自ら手を貸してしまったわけだ。


後者について言えば、反小沢――岡田・前原体制の崩壊が再び繰り返されるんじゃないかなという気がする。
岡田体制は郵政選挙大敗の引責で、前原体制は永田メール事件の不手際で崩壊したけど、あの後、「結局若造じゃダメ」「対案路線(政策的対案を提示する)じゃダメで、自民の全てを全否定する「対決路線」じゃなきゃダメ……ということになって、小沢体制が生まれた。
反小沢陣営*4が政権与党として現実路線に向かえば向かうほど、自民時代に政策的にも回帰して行かざるを得ない。
それについて自民時代を嫌って民主に投票した有権者から見れば、「自民とやってることは同じ」という不満になる。
そこで支持を落としていったところで、改めて民主内から出てくるであろう「やっぱり小沢じゃなくちゃ」という声に対する受け皿になるために、民主党内で臥薪嘗胆するんじゃないかな、と。


どっちにせよ、反小沢陣営が「正気」に戻る気があるなら、小沢を切って自民と政策的連立を模索する、ということになる。
ただそうなると、政界再編はかなりめんどくさいことになる。
つまり、単純に「民主vs自民」ではなくて、「正気で現実路線」vs「狂気で理想路線」の二択。
現状の、「民主+社民+国民新vs自民+公明、その他」から、
「民主反小沢陣営+自民+みんなの党+公明+改革 vs 民主小沢陣営+社民+国民新+たちあがれ日本
と、だいたいそんな感じ。

ただこれは、民主が小沢から完全に離脱し正気に戻る気があるなら、という前提であって、たぶんそうはならないw


政治に興味のない人でも、これから暫くの「民主党政権第二幕、新たなるコメディアンの登場」をあきれ顔で楽しむのがよろしかろうかと思う。


菅直人拉致問題に関しては、拉致実行犯・辛光洙の釈放除名嘆願に署名している前科があり、ここはつっこまれどころだろう。
米軍に関しては「自分が総理になったら全て撤退して貰う」なんてことを野党時代に発言してたので、これもつっこまれどころだろう。
小泉政権時代に「国債30兆円を守れないとはなんたること」という英雄的批判wで功を得た経験があったが、今度は国債44兆円に対してどう弁明するのだろう。「自分が決めたことじゃない」とでも言えばアウト。あんた副総理だったでしょう、とつっこまれるだろう。


日本のことでさえなければ、こんなにおもしろい総理もいないだろうけどなあ……。はー……。

菅直人語録
http://yasz.hp.infoseek.co.jp/log2/kan-56.htm


菅直人 - アンサイクロペディア
http://ansaikuropedia.org/wiki/%E8%8F%85%E7%9B%B4%E4%BA%BA




PS.
そういえば。
菅直人内閣は、学生運動の「闘士」だった人々によって構成されている、という話。
つまり、団塊世代のアイドルによってできた内閣、みたいな感じで、某所では
学生運動内閣】【山岳ベース内閣】
と名付けられている様子。


うまいこというなあw

*1:口蹄疫の対処は引き続き赤松農相に押しつけだろうw

*2:特殊部隊が強襲して政府首脳を拉致・暗殺してしまい、指揮系統を麻痺させた上で傀儡の暫定政権を作って既成事実化してしまう、というもの。正規軍が大規模展開しないので全面戦争には成りにくいが、防衛側も大戦力で対抗しにくい。中国に台湾に対して、北朝鮮が韓国に対して想定しているらしい。

*3:実際には一部審議はもう始まってるらしい

*4:とはいえ、トップはさしたる対案のないのが売りの菅直人だが