ブレザオラについてもっと考える

ここ最近、口を開けばブレザオラなのだが、原材料は必ずしも牛肉でなくてもいいものらしい。
例えばマグロを用いたもの、鹿肉、馬肉などのバリエーションもあるらしい。
前回の経験と合わせて、これらの肉質の共通点を挙げるとするなら、

  • 赤身であること(脂肪が少ないこと)
  • 筋が極力入ってないこと

という感じ。
日本人にとっての肉食は「脂が乗ってるほうが肉汁も多くて嬉しい」という感覚だが、ビーフイーターの感覚では「牛肉はランプがいちばんいいんだ!」というような話をよく聞く。日本ではランプはあんまり人気がないけど、あれをウェルダンに焼いたようなゴムみたいなのwをアメリカ人やオーストラリア人は好んだりもするし。

実際、ハムやジャーキーなどには高タンパク低脂肪系の肉、日本人的感覚で言えば安い肉、そしてビーフイーター達にとってみても「火を通すと固くなる肉」のほうが、半生に仕上げるブレザオラに向いているらしい。
本場イタリアでも、最近では地元の牛肉よりも脂肪が少ないメキシコ産の牛肉を輸入してブレザオラの材料にしているんだとか。
てなことを考えると、安い肉、どちらかというと敬遠されがちな肉であれば、肉の種類を問わずブレザオラには向いていると考えてよさそうな気がしてきた。


ハム、生ハム、ソーセージなどの肉加工品の多くは豚肉で作られる。ベーコン、生ハム、プロシュートの類も豚肉由来だし。
なので、豚肉は敢えて除外するとして、それ以外で赤身で火を通すと固くなりそうな肉というのを考えてみた。

  • 鹿
  • エゾジカ
  • *1
  • ダチョウ
  • カンガルー


日本で手に入りそうなものといえば馬肉、鹿肉、エゾジカ、鮪あたりか。馬肉は高級品、鹿肉だって安くはないわなあ。鮪は、たぶんそのまま生で食っちゃうと思うんだ。ディープワンズだから。僕。


エゾジカは「結構固い」と聞いたことがある。
楽天で「エゾ鹿」で検索してみると、ミンチになっているものが多いようだ。ミンチではない塊では、ロースが1kgで3500〜7000円くらい。むーん。グラムあたり350〜700円つったら、ほぼ倍くらいの価格の振り幅がある気がするが、ミンククジラの価格帯と変わらないorz
エゾ鹿の特徴を見ると「上品で淡白であっさりしたヘルシーなダイエットに向いた」というような釣書が並ぶ。が、同時に「野生の肉独特の臭みが気になる方は」というような注意書きも付いている。
そして、「天然肉なので必ず加熱して食え」という注意書きも付く(^^;)
この釣書&注意書きは、実はカンガルー肉の宣伝にもほぼ同じ文句が並んでいた。


カンガルー肉はオーストラリアが絶賛売り出し中というか、「野生動物だけど増え過ぎちゃって絶賛処分中」で、捕鯨問題と搦め手でやり玉に挙がることが多い。
この「殺処分」された後のカンガルーはどうなっているのかというと、オーストラリア人がおいしくいただいて……いるかっていうとそうでもないらしい。食べてる餌は牧草肥育の牛肉と大して変わらないので、肉からは草の香りがするらしい、という話なんだけど、脂肪重視ではないが故にというか、家畜牛に比べて運動量の多い野生動物である故か、脂肪が少なく筋肉が多く、赤身*2。そして、この手の「筋肉中に血が多い肉」というのは、加熱すると筋肉中の血液が凝固するので固くなる。柔らかいレバーも加熱するとがちがちになるのと同じ。だから赤身肉は火を通すと固くなるんですな。和牛/国産牛は筋肉の中に網の目状に脂肪(サシ)を入れることにこだわっているので、肉の凝固を防いでる*3ってことかなあ。
が、そういう赤身肉は加熱すると固くてマズイwので、どう処理されているのかというと、

  • ミンチにして他の具材を混ぜ、加熱しても咀嚼できるようにする
  • 野生動物特有の臭み*4が強いので、スパイスをたっぷり使うか、味の濃い煮込み*5にする

という調理法になる。
しかしそれでも、年間350万頭は食べきれないので、「ドッグフード」に加工されているらしい。
カンガルー肉は「ルーミート」という名前で検索すると扱っているところがちらほら見つかるが、それらのほとんどは「愛犬のためのヘルシーフードとして」という釣書とセットで散見される。
うーん、犬の餌か(^^;)


が、「筋・脂が少ない赤身肉、加熱すると固い」というブレザオラのための条件は結構満たしている。
人間用に下ろしている店もあるようで、そういうところでは調理例として「タタキなど牛肉と同様にお使いいただけます」というような説明がされているので、生食かそれに近い加工方法はいける、かもしれない。


ではお値段は?
これまた楽天で検索すると、16kgで23000円……これはドッグフード用だった(^^;) だいたいそんなに要らねー。1kg単位くらいで売ってないのかなとか捜してみると、500〜600gで1200〜1500円くらい、或いは1kgで1500円くらい(ミンチ)。
エゾ鹿とどっこいくらい、若干安いかどうか、くらいか。


うーん。
ハナマサで豪州産牛肉を買うと、100gあたり97〜128円くらい。
それ考えると、牛肉のほうが全然安いな(^^;)


牛肉以外の肉でなんかでけんかとぐるぐる考えたら、結局牛肉に戻ってきた。
ブレザオラ向きだというメキシコ産牛肉は、つまりは脂肪が少なくて固い肉*6なので、ますます日本には入ってきてなさそうな。日本人は柔らかい肉、油っこい肉を珍重するからなあ(´・ω・`)


そういうわけで、前の分はまだ食べきってないんだけど、もう次を作りたくてたまらん感じ。
やべえ。癖になる。なった。

*1:そういえば、鮭の身が赤いのは食べている餌(オキアミ/海老類)の色素が移ったものであって、赤身肉というわけではないらしい、と聞いた。

*2:運動量が多い生物に共通の特徴で、筋肉に血中ヘモグロビンが多く運ばれるために肉が赤くなる。鮪が赤いのは泳ぎ続けないと死んじゃう魚だから。近海で漂うように生きているw青魚、白身魚の類の身が白いのは、大型回遊魚に比べて運動量が少ないから、という説明ができる。

*3:というか、固まった繊維が脂肪に沿ってほぐれるとか。

*4:野生動物じゃないけど、羊や山羊の類のように、肉に匂いがあるらしい

*5:欧米だとシチュー

*6:そういう品種らしい。