メカジキで作るツナ

この前、有袋類から「炊飯器で鳥のコンフィを作って食ったらうまかった」という話を聞いて、ずっとやってみたかった。
のだが、今年は鶏肉が全般に高めだったので、手が着かなかった。
で、昨日メカジキが安かったので、メカジキでやってみることにした。
コンフィというのは、要するに低温の油で茹でるというか蒸すというか、そういう調理法で、フレンチあたりの技法。日本で油を使う調理法と言えば天ぷらの渡来とセットになっているのであろう揚げ物(フライ)が真っ先に思い浮かぶ。油温は170度とか200度とか。
コンフィの場合は、水の沸点より低い80〜90度くらいらしい。
へー。


というわけで、ツナ……シーチキンを作ってみた*1
最近はヘルシー志向で水煮・スープ煮のシーチキンが流行りだけど、ここはひとつ本格的に。


材料は昨日買ってきたメカジキのアラを使う。
まず、骨が入ってると厭なので、骨などを一通り掃除する。
これに両面にまんべんなく塩をして、冷蔵庫で小一時間寝かせる。
出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取って、ここにローレルをまぶす。ローレル(リーフ)を折って入れてもいいんだろうけど、手元にパウダーがあったので振りかけてみた。
ジップロック的な口が閉められる耐熱性の袋にメカジキを入れる。
今回は塩とローレルのみのものと、塩とローレルとバジルの入ったものの2袋に分け、上からオリーブオイル*2をたぱたぱ入れる。空気をしっかり抜いてフタを閉じる。
炊飯器の内釜に給湯器の湯を入れる。だいたい42〜3度くらい。
この中にメカジキをジップロックごと入れ、炊飯器の保温ボタンを押す。保温では、温度は80〜90度くらい、沸騰しない程度の温度に保たれるらしい。
この状態で保温加熱していく。
ふと思ったんだけど、シャトルシェフを使って一度湯を沸騰させた後、保温調理状態でやってもいいのかもしれない。
自家製ツナの作り方(イタリア流)を調べていくと、「1時間ほど油で茹でろ」という感じなのだが、今回、試しに1時間ほど加熱してみたけどあんまり湯温(油温)が上がってない感じだったので、もうちょっと放置してみるつもりでいたら、うっかりそのまま寝てしまった(^^;)
都合、6時間ほど加熱。うーん、よかったんだろうか。
でも、味見してみたら非常にほどよい感じだったのでok。味は振り塩した時間とハーブで決まる様子。
ただし、加熱時間が長くなると身から出た水分と崩れた身が混じり合って、バーニャカウダソース*3みたいになったものが、油の下層のほうに澱のように沈む。たぶん、身を磨り潰しながらもっと長時間油煮にしたら、バーニャカウダソースが作れると見た。今度そっちも作ろう。


ピザソースの瓶(だいたい350ccくらい)がちょうどよい大きさだったので、煮沸消毒して水分をよく切ってから、冷ましたツナを詰め替える。今回はメカジキアラ400g相当のうち、300g相当がツナになった。100g分は身が綺麗だったのでw、ナンプラーに漬け込んでから椀モノにして食ったので。
作ってみて、だいたい水分が抜けて半量くらいの大きさに仕上がるような感じなので、350ccくらいのビンに詰めるつもりなら元の分量が600〜700gくらいあっても大丈夫かもしれない。手間も掛かるものなので、できれば大量に作りたいところ。袋詰めしてから湯煎で加熱するやり方だと使う油の量も少なくて済むし。
瓶詰めするとき、ときどきビンの底を叩いたり揺らしたりしながら空気抜きをしつつ、煮込みに使った油もいっしょに流し込み、空気を遮断する。
この油はメカジキと塩とハーブの香りも吸い込んでいるので、バゲットを浸して食べても美味しい。ツナの風味が非常によい感じに出てる。
ボイルドガーリックを作った時の副産物であるガーリックオイルも、同様に塩胡椒+チリペッパーを振ってパンを浸して食べると美味しい。溶かしバターと同様の感覚で使えるというか。


基本的に「オイル漬け」の保存食品なので、「消費期限今日まで!」みたいな大物の魚*4は、この方法で処理すると「フタを開ければすぐに食べられる」という加工系保存食になる。
戦争での糧食需要で缶詰が発達する前は、この瓶詰めが主流だった*5
このことから、空気遮断さえしっかりしていれば瓶詰めオイル漬けでも相当長持ちする。少なくとも涼しいところに置いて一冬っていうのも普通に行ける。これも生鮮食品が手に入りにくくなる冬を越冬するためのヨーロッパの風土の知恵なのだろうと思う。多湿*6、冬でも生鮮食品が普通に手に入る現代の日本とは異なる知恵だ。


そんなわけで、後でバゲットに塗って食べよう。

*1:既に一般語として定着している「シーチキン」は、アメリカ辺りではどうやら商標になっているブランド名らしい。そういえば、日本でははごろもフーズの商品名で、他社製品は「ツナ」と呼ばれる。

*2:ウチでは例によってグレープシードオイル

*3:オリーブオイルにアンチョビを溶かし込んで煮込んだ魚のソースで、生野菜や温野菜を付けて食べるイタリアの冬の家庭料理「バーニャカウダ」のメイン。チーズフォンデュのチーズのように、食材を浸したり拭ったりして食べる。いっぺんやってみたいと前から思っている。

*4:肉も同様に作れるようだ

*5:戦時糧食も初期の頃は瓶詰めだったらしい。アメリカでは大戦参戦に当たって缶詰が発達し、流通が未発達だった時代(それは遠隔地においては今も)に食料輸送のスタンダードになり、冷凍食品やフリーズドライなどの発達に繋がっていく。戦後も「缶詰がたくさんあること」が豊かさの象徴だった時代があり、地域によっては今もその状況は変わらない。

*6:日本は冬でも大陸に比べて湿度は高い。海に囲まれた風土がそうしている部分もあるんだろうけど、湿度が高い=腐敗しやすい=食料が保存しにくいということから、生鮮食品を新鮮なまま食べられること=贅沢で安全という思想が発達したのかもしれんなあ。